第14話 18歳未満お断りと化した夢部(仮)!

<これまでのあらすじ>

夢は好きですか?

俺は寝れば必す夢を見ちゃう男です。

なので夢を食べる獏(ほんわか美少女とガチ百合美少女)、夢に現れて精気を吸うサキュバス(ガリロリメガネとエロい体系のお姉さま)に囲まれております。


そんな人外たちと部室で鍋を始めたのですが、ガチ百合美少女の夢香先輩が急に発情したのです。


先輩はガチ百合、俺は男、どうすればいいか教えてください!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 


「夢香先輩? だ、大丈夫ですか?」

 

 そう訊くと同時にへたり込む先輩。


「あぁ、ダ、ダメエ……か、体が火照ってぇぇん!」


 なんと畳の上で激しく身悶え始めた。

 

「ちょ……先輩?」


 あれは腹痛か何かだろうか? 近づいて何かすべきなのか? そう混乱する俺をよそに先輩の身悶えは激しくなっていく。


「体の芯が熱いのぉ! アレも、アソコも熱いのぉん!」


 たわわな胸と股間を手で押さえ、衣服も乱れんばかりに悶える夢香先輩。

 

 イ、イヤラシ過ぎる! とても正視出来ない!


 そこへ元気なロリ声。


「むひひゃあー、お兄ちゃんー、わらわのお兄ちゃん」


 いつの間にか俺の後ろに咲馬が立ってた。

 そしてぺったんこな胸を背中、といっても尻の上あたりの背中に押し当ててきた。

 

「今宵のわらわはおかしいでござるの。お兄ちゃんにたかぶっておりますでござる」

「何で拙者じゃなく、わらわになってんの!? っていうかお姫様?」

「ご託はいいでござるー!! お兄ちゃん今宵こそわらわと契ろうではござりませんか!」

「落ち着け咲馬、今宵って今昼だからー! それに俺お前の兄ちゃんじゃないからー!」

「愛する力は昼を夜に、鍋殿も血の繋がった兄に変えるでござるよー!」


 片方の足に膝カックンをくらった俺は横に倒れる。


「お兄ちゃんーお待たせ! 今契るでござるよー!」


 こちらの腹へ馬乗りになった咲馬がもどかし気にダボダボ制服を脱ぎだした! 

 

 リアルでちびっ子サッキュバスに犯されるなんてまっぴらゴメン何ですけど!! 

 そうだ、夢香先輩にここはキツーイお仕置きを!

 って、胸と股間に手をやってエロい声あげながら畳を転がってる! 無理か。


 いよいよ制服の上を脱いだ咲馬が上半身を曝け出す。

 無意味な事にブラなんかしている、それも盛りパッド付きだ。

 何でこんなもの見なきゃならないのだ!

 

 必死に体を動かして咲馬をどけようとするも、どういう訳か子泣き爺みたいにどっしり重くビクともしない。

 

「な、鍋く~ん……」

「ば、獏天! 何とか咲馬をどかしてくれ、ノロいお前でも何とか出来るだろ!」


 咲馬のぼさぼさサイドテールを鷲掴みにした獏天があっという間も無く投げ飛ばした。

 

「え?」

「誰がノロいじゃワレェ」

 

 ほわほわ獏天の口から出たとは思えないドスの効いた声、しかも何故か関西弁。

 

「ちょ、え? あの……」


 いつもの獏天とのギャップに混乱する。

 例えるなら、ゆるキャラがガワ脱いだら肩にタトゥー入った筋肉隆々金髪お兄さん出現、というか。

 

「もう一度言ってみんかい! コラりっひゃあ!!」


 勢い良く俺の腹を跨いだ獏天がドスンと腰を落とす。


「ぐぶうぇ!」

「言えんっつーか!? ボーズゥ」


 そして鼻と鼻がぶつかる様顔を近づけてきた。


 ううっ、なんつー凶暴な顔! ガチでコエェ!


「おどりゃあ、落とし前つけんかい、ごっつう美味い夢でなあ~」


 獏天の口から垂れたヨダレが、怯えて半開きになった俺の口へ落ちる。

 それは微かにすき焼きの味がした。


「ほれ、はよう眠りにつかんかい」

「すぐには眠れな……」

「なにぐずぐずしとんじゃ! ワレェ!!」

「はひぃぃ!」


 南無三! と目をきつく閉じた。すると

 「らりひゃ~」

 と、いう声と共に柔らかい顔とふさふさの髪が俺に覆いかぶさってきた。

 

 驚いて瞼を開けると、獏天の頬が俺の頬へ押し付けられていた。

 

「むむっ」 


 そして、む、胸が……けっして大きくは無い獏天の胸が、俺の体に密着しているのに気付く。


 こ、この柔らかさは何だ一体!? しかも髪からはイチゴみたいな甘酸っぱい香りがする!


 突如柔らかい感触が消えた。


「鍋島君、大丈夫?」


 両肩を掴み、意識を失った獏天を起き上がらせるメディ先生が目に映った。


「メ、メディ先生、これって一体……」


 夢香先輩、咲馬に目をやると二人はイビキをかいて、いつの間にか寝ていた。

 

「私にもさっぱり」


 メディ先生はそう言いながら獏天を横に寝かした。


 俺は肉が入っていたプラスティック容器の所へ行くとそれを拾い上げ、皺くちゃになっているラップを伸ばし、そこに貼ってあるシールへ目をやった。


 見た事も無いヘンテコな文字が並んでいる。


「先生、この肉ってどこの輸入品ですか?」

「え? 魔界産だけど」

「何ですか、魔界産って。っていうか何の肉ですか?」

「ベヒーモスのお肉よ。物凄く高級なんだから」

「物凄く高級なんだから、じゃないですよ! ベヒーモスって思いっきりモンスターの肉じゃないですか! つーかそれ早く言ってくださいよ! 獏天達がこうなったのも全部先生のせいですよ!?」

「そ、そんな……ベヒーモスの肉は獏や夢魔に有害だったというの?」

「ヤバイんじゃないかって考えますよ普通。まあ、俺は一切れしか食べてないせいか何ともありませんけど」


 そう言いながら鍋の置かれたテーブルへ戻る。


「先生、ベヒーモスのエキスが溶け込んだ鍋、危険ですから食べないでくださいね」

 

 言ってからコーラの入った紙コップを口に付けた。

 

「そうね、愛人のベリアルさんが届けてくれたものだけど、しょうがないわね……」

「ベリアルさんって……あの悪魔王のベリアル?」

「あら知ってるの?」

「知ってるも何も、四天王レベルじゃないですか」

「あらあら、確かに魔界では地獄の貴公子って呼ばれてる有力者だけど」


 あのベリアルの愛人とかって、さすが上級サッキュバス。ぱねぇ……。


 再びコーラを口へ流し込んだ俺は、横で寝ている獏天に目をやった。


 さっきまでの、命の危険を感じさせる顔から一変、いつものほわほわ顔で寝息を立てている。

 

 そういえば夢を食べるこいつら、そう――――

「獏って夢を見るんですかね?」

「夢? 獏は夢を見ないわよ」


 ワインをチビリと飲んだメディ先生が答える。


「見ないんですか?」

「夢を食べる獏が夢を見たら、おかしな事になるからじゃない?」


 メディ先生が再びワインをちびりと飲む。


「おかしな事って?」

「楽しい夢はともかく、悪夢なんて見たら悪夢を食べられなくなるんじゃない、って事よ」


 獏天の寝顔に目をやる。

 ほわほわした顔で小さな寝息を立てている。

 

 ドキドキもハラハラもワクワクも無い、意識の切断。

 獏天は今そこにいるのだろうか。毎晩夢を見る俺にはそれが羨ましい事なのか、 寂しい事なのかわからなかった。

 

「むひ……むひひひ……それは、むひ」


 咲馬の声に部室の隅へ目をやると、、仰向けのまま体をもぞもぞ動かし

「いけないでござる、拙者は血の繋がった妹でござるよー!」

 など独り言を呟いている。


「ワタシ達夢魔は夢を見るわ」


 チーズを食べながらメディ先生が言う。


「あの様子じゃ、さっきの続きみたいな夢でも見てるんでしょうかね」

「見てみる?」


 飲み干した紙コップをテーブルに置き、ハンカチで上品に口を拭くメディ先生。


「え、見るって何をです?」

「あの咲馬の夢よ。私位の上級夢魔になると自分以外の誰かを連れて夢の中に入り込む事が出来るのよ。どう一緒に見てみる?」


 どういう方法で夢に入り込むのか見当もつかなかったが、人の夢を覗けるとは激しく興味がある。


「み、見たいです。先生」


 返事をすると同時にメディ先生が立ち上がった。

 そして俺の背後へ来ると、両肩に手を乗せ座り込む。

 

 え? 何? と思う間もなく、先生の腕が俺の首を絞めつけた!


「むぐええ!?」


 喉からヒキガエルみたいな声を出て、視界がボヤけてきたその時、テレビのチャンネルを変える様、視界が見た事もない景色に切り替わった。


 その景色とは――――。



「むひい……あーよく寝たでござる」


 咲馬が目をこすりながら体を起こした。


 それに気付いた俺は、

「よう咲馬、ずいぶんご機嫌で寝ていたじゃないか。どんな夢を見てたんだよ」

 と声をかける。


「んん?……むひっ! それは秘密でござるよ」


 口に手を当て、しっぽりとした笑みを浮かべる咲馬。そんな彼女に俺は、

「お前が俺の事お兄ちゃんって呼び出した理由がわかってしまったよ」

 とぶっきらぼうに言った。


 オッドアイを大きくし、

 「むひっ? な、何がわかったでござるか?」

 と咲馬が体を震わす。


「幼い頃両親を亡くし、一人暮らしする俺の所へオッドアイの少女がやってくる。それは腹違いの妹……」

「む……ひひ?」


 ぽりぽりと頬を掻き、意味不明に左右を見る咲馬。明らかに動揺している。


「にしても何でアニメ画像なんだよ。しかも俺の好きな治部煮作品のイケメンみたいに俺なってるし。そもそもエロ兄妹ものにしては作画が清々し過ぎねーか、咲馬」


 これに咲馬の顔が完全に硬直する。


「な、な……なんで拙者の夢をお兄ちゃんが知って、むひっ!いや……そんなまさかでござる」


 目を泳がせ、額から尋常じゃない量の汗を流す咲馬。


「それにしても腹違い、種違いの妹が二十人出てくるってどんなエロゲ? つかどんだけ作りまくってんだよ、その両親」

「むひー? 何で知ってるでござるかー!?」

 

  そう言って頭を抱え、畳の上を転がりまわる。


 本当に他人の夢を見てしまった。

 それも座席からスクリーンの映画を見るようなものではない。

 スクリーンの中に入り込み、映画の登場人物の一人になった様その夢を見てしまった。

 これは凄い体験だった――――とはいえ、メディ先生の腕で首を絞められないと出来ない体験なのだが。

 そんな目に遭ってでも他人の夢をまた見たいか? と訊かれたら十中八九俺はNOと答えるだろう。

 

「ふいい~、何かうるさいですよ~、静かに眠らせてくださいよ~」

「むう、安眠の邪魔をする者はハリセンでツッコミだ、むにゃ」


 獏二人はそう言うと再び寝息を立て始めた。


 紙コップのコーラを二、三口飲み、俺は部室の窓へ目をやる。

 青い空の下、ポプラ並木が風になびいていた。


 ――――夢を見ないからこそ夢を食べられる、か。


 俺の口から、自分でもビックリする程長いゲップが吐き出された。




 次回、獏本部から支局長(ネコ耳フードのロリ娘)がやってきます!

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