第10話 百合お仕置き の巻

<これまでのあらすじ>


 悪夢を食べたくないという人類を舐め切った獏ちゃんこと獏天優夢(ばくてんゆうむ)。


 そんな彼女と主人公の前に超エリート獏、獏炎夢香(ばくえんゆめか)が現れる。


 ロングヘアに凛々しい顔つきのお姉さんだが、好みの女性を見ると気が触れたように劣情を爆発させる救いようのない超変態百合であった。

 

 彼女はさっそく部室でエロゲをしているロリ娘サキュバスの咲馬(さくば)に目をつける。

 そして獏天や主人公をほったらかしにして、咲馬に劣情の魔の手を伸ばすのだった。


  ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ

 


「うおおお! 女こそ美なのだ! 更に突き詰めればメガネ娘こそ至上の美なのだ、可愛い! 可愛いぞ咲馬ぁぁ!」

「むひゃー!!!! 何するでござるー、誰か、誰かお助けをー!!!!」


 腹筋ポニーテールがガリチビ娘を性的暴行しようとしている図式に動転した俺は

 「ば、漠天! お前の幼馴染、何アレ!?」

 と、漠天へ詰め寄る。


「あ~、夢香ちゃん昔っから小さなメガネっこが大大だ~い好きだったんですよ~」

「だったんですよ~じゃなく! 早くあれ止めたげてー!」

「え~? 咲馬にはいいお灸だと思うんだけどな~」

「お灸が百合ツボ直撃したらどうすんだよ、百合趣味に目覚めた咲馬に、今度はお前がお灸据えられちゃうよ!?」

「はわわ、それは最悪です~」


 何ともノロい女の子走りで絡み合う二人へ辿り着いた獏天が、

「夢香ちゃ~ん、いい加減止めてくださ~い」

 と背中をポコポコ叩くが

「うおりゃぁぁ! こいつぁ上モノだぜ、じゅるるっ、このっ! このっ! その手を早くどけるのだぁぁ、うはははっ」

 と、まったく相手にされなかった。


「もう~、こうなったらこれしかないです~、やっちゃいますよ~」

 

 漠天が拝むよう両手を合わせると、人差し指をピンと立てた。そして

 「えい!」

 と、いう掛け声と共に、スカートがめくれパンツが丸見え(意外にもピンクだった)になった先輩の尻に思い切り指先を突っ込んだ。

 

「うはぽん!?」

 

 背骨が折れるんじゃないかと思う位、激しく仰け反った夢香先輩が、両手を股間に当てパタンと横へ倒れた。


 そして畳の上を物凄い勢いで転がって行くと壁に激突し、両手を当てた股間をあられもなく広げたまま動かなくなった。


 凛としたクールな先輩像をこれ以上壊したくない俺は体の向きを漠天の方へ変えた。

 

「夢香ちゃんがおかしくなった時にはこの方法が効くんですよ~、って、うわっ、臭いです~」

「おい、さすがに女子のアソコへ刺し込んだのを嗅ぐのはドン引きだぞ」


 持ち上げた指先から顔を背ける漠天に、俺は肩をすくめて見せる。


「むひはー……マ、マジで犯される所だったでござる。も、もう金輪際エロゲのレイプものはやらないでござるー」


 乱れまくったブカブカの制服で荒い息を吐き横たわる咲馬の所まで来た俺は、ずれたメガネを直してやった。


 するとオッドアイの目に見る見る涙を溢れさせた咲馬が

 「ありがとうでござるー! 拙者、鍋殿の優しさに汚れた心を洗われた気がしたでござるー、おろろーん!」

 と、泣いて抱き付いてきた。


「よしよし、酷い目に遭ったな。でも夢香先輩も伝えること伝えたし、もうここ来ることないだろ」


 ――――これが人間の精気を吸うサキュバスか……恐怖に震えるただの女の子じゃないか。


 そう思い、戸惑いながらも咲馬のボサボサ頭を撫でる。


「な、鍋く~ん。そんな奴に優しくすることないですよ~、何か切ないです~」


 獏天の情けない声が耳に入るがここは無視しよう。


 そこへ「何を言っている鍋島」 と、夢香先輩の声。

 

 俺は驚いて目をやった。

 

 むくりと起き上がった夢香先輩が

 「自分は本日付でここの部員だ」

 と、少々気恥ずかしそうにスカートの裾を正すと、痛そうにお尻をさすった。

 

「優夢と共にその新種悪魔を退治する任務を遂行せよ、という支局長からのもう一つの命令でな。いつつ……」

「え~、そうなの~? あ~、でも助かりますよ~、頑張ろうね~夢香ちゃん」

「ああ、頑張ろう! というか優夢、さっきはよくも第二関節までめり込ませてくれたな! 私はお尻を開発される趣味はないぞ!」

「ええ!? だってしょうがないですよ~、ああしないと夢香ちゃん止まらないでしょ~」

「ううっ……そ、それにしても限度がある! せめて第一関節までにするとかだな……」

「ヤメヨ!!」

 

 突如ボイスチェンジャーを通したような、機械的な低い声が部室に響き渡る。

 

「はっ! ししし支局長!?」

 

 慌てふためいた夢香先輩がスカートのポケットからスマトラフォンを取り出す。するとどういう仕掛けなのか、スマトラフォンの画面から、狼の様な耳を立て青い目を光らせたシルエットが大きく浮かび上がった。


「シンシュアクマ、カサブランカトテヘランデ、カクホサレテオリュ。オマエタチモ、ケツニユビトカイッテニャイデ、ハヤクトリカカリャンカ!」

「ひゃ~! わ、わかりました~、支局長~」

「はっ! 早速取り掛かります、支局長!」


  二人が遥か昔の戦隊に出てくるラスボスみたいなシルエットへ何度も頭を下げる。

 

「ソレトモウヒトツ、ニホンノスイーツハ、タイソウウミャイ。コンドオクルヨウニ。チナミニ、アンコケイダジョ」


 そう言い残し、シルエットは消えた。


「まずいですよ~、支局長に夢香ちゃんのお尻に指入れたのバレちゃいましたよ~」

「まずいのはそれじゃないだろう! 新種悪夢に入り込まれた人間を早急に洗い出さなければ……」


 二人があたふたするのを聞きながら俺は先程の話しを思い出し、小さな胸騒ぎを覚えていた。


 新種悪夢に入り込まれた人間ってまさか俺のことじゃないよな? だって高校に入ってから内容の憶えていない悪夢を見始めたし……。


つづく

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