第53話

 ……いや、何バラしてるの?


 もうここまできたら言ってしまおうか、と考えていた俺だったが、早川が思いの外早く伝えてしまった。


美月>……は?


和人>……。


詩音>セフレ!


 先ほどからふざけているのか、早川の言動が気になる。


「早川、この話、また今度にしない?」


 よく考えれば、こんなところで話したところで何が変わるわけでもない。……どこで話したとしても変わらないかもしれないが。

 みんな、何のために集まったのか、完全に理解できていないのが問題なのだ。


『美月、早川が言ったこと、どう思った?』


 早川が言ったこと———俺と早川の関係が、セフレという名前であること。

 でも実際は、そんなセックスフレンドと呼べるような間柄になれているのかも分からない。


 二人でいる時間が長くなってから、それはもはやセフレではなくなっていたと思う。会うことを、仲良くすることを、生きることを目的として、本来のセフレではない。


 もう俺はここまでたどり着いてしまった。帰れない場所まで、戻れない地まで。


 もしこの家にいる高校生の四人。彼ら全ての関係が一度リセットされたなら、俺は早川じゃなくて、彼女の元へ……。


『よく、分からない。具体的にどんなことをしてたとかも知らないし。そんな関係が実際にあるのかも私は知らなかったわけだから……』


 俺は武藤と別れてほしくて、美月に。


『明日帰ったら、美月言える勇気ある?』


『…………無い』


 ………………………………。


美月>@詩音 私がまだ知らない世界、早川さん和人とどれだけ過ごしてきたのか、全く想像つかないよ。でもね、和人くんと仲良くしてくれてありがとう。


 美月のLINEは、俺にはよく分からない。なんでこんなことを送ったのか。

 

 彼女のLINEの内容は、俺から見ればかなり薄いように思える。どう考えても文面通りの意味にしか解釈できない。


「ごめん、早川」


 気付いたら、何故か俺は早川に謝っていた。何を罪に感じたのが、自分の中で明確にできないまま。


「和人くん、なんで謝ってるの? 和人くんが謝る理由なんて、どこにもないよ」


 そう言って早川は、笑顔を浮かべる。

 早川の笑顔が眩しくて、俺は目を背けたくなる。その笑顔が俺のためなのだとしたら、ホントに申し訳なくて。


 俺の気持ちに気づいた早川は、俺と自分との関係の名前を残そうとする。意味が無いって、分かっていながら。


 この状態だと、笠原に面子が立たないし、笠原と現時点で付き合ってることになっている武藤からも、絶対何か言われることになる。


 笠原はもう、別れを告げた。



【あとがき】

 ガマンできずに新作を公開しましたー!

 第2話が、今日の22時に投稿されています。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054918195650

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