第52話
俺と笠原、そして早川は、食卓テーブルに集まり、会議を始める。
「えっと……。何するために集まったんだっけ?」
本当はよく分かっているのだが、この場にいる誰かに言わせたくて、あえて任す。
「早川さんの話でしょ? 確かに武藤と二人はキツいかもしれないけど、ストーキングはよくないっていうか。その辺について問い質すために集まったんじゃない?」
「あー、確かにその通りなんだけど……」
俺は、右隣に座っている早川に目をやる。先ほどからずっと俯いたままで、何も話さない。
玄関で会話をしたのが最後だ。
「早川、なんか話してくれ。寂しいじゃん。別に早川に怒ってないし、なんなら一人にして申し訳ないなーって思ってるし。明日帰ることになるけど、その前になんか奢るよ? ……分かった。課題だ課題。俺、ほとんど終わってるから、手伝ってあげるよ。……今度、お姉さんも一緒に遊びに行こうか」
なんだか見当違いなことを言っている気がして、普通に恥ずかしい。とにかく早川に喋ってほしくて、気を引くような言葉を投げかけているだけだ。
「あ、そうだ早川。明日の朝早くに起きて、寝起きの武藤に水をかけ———」
武藤への最低なイタズラを提案しようとしたときだった。早川がついに口を開く。
「……和人くんは、早川さんと付き合ってるの?」
頭のどこかで予想していた質問であった。
「……付き合ってないよ。美月には……武藤がいる」
「ふざけないでよ和人くん。これから付き合うつもりではいるんだよね? 武藤くんが笠原さんと別れたら、和人くんが笠原さんの恋人になるの?」
「待ってよ早川さん。早川さん、今は和人と付き合ってるんじゃないの? 今日、外に出てるときに思ったんだけど、まるでホントは付き合ってないみたいな……」
「笠原さんは武藤くんと本気で付き合ってるの? 付き合ってるのは本当だとしても———」
「俺と早川は、正式なカップルとかじゃなくて———」
「二人とも声が大きいよ、ここをどこだと思ってるの?」
「笠原さんは、いい加減武藤くんと早く別れなよ。そうしたら、和人くんを譲ってあげる」
「待て待て待て待て待て」
誰も俺たちをまとめてくれはしないので、それぞれが言いたいことを言い合って、わけの分からないことになっていた。
「早川さん、和人とはどういう関係なの? この前は付き合ってるって言ってたのに、なんか……おかしいよ? 普通じゃないみたい」
「笠原さんだって、彼氏のこと好きじゃないんじゃ、普通のカップルじゃないと思うんだけどな」
「早く言ってよ」
「美月、あとで。あとでLINEで会話でもしよう。あんまり声に出していいたくないことだし。そんな伝えるのも難しくはないから。理解するのに苦しむ可能性はあるけど」
そこでパタリと会話は止み、それぞれがここでスマホをポケットから取り出す。
「え、ここでするの?」
てっきり部屋に戻ってからするものだと思っていた俺は、心の準備が……。
『私たちは、セフレです』
【あとがき】
明日の投稿はお休みします。
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