第46話
「武藤は? っていうか、笠原は? アイツらどこ行ったの?」
無事、万博公園に入場。初めて来たが、むちゃくちゃ広かった。とりあえず、太陽の塔の前で記念撮影して、やることは終わったが。
「和人くん、聞いてなかったの? 二人で手を繋ぎながら、『オレら、ちょっとデートしてくるから、お前ら一時間後に広場に集合な』って、言ってたよね」
「知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない。武藤の話なんて、いちいち聞いてないよ。あと、笠原全然喋らないよね。武藤が勝手に計画したやつだから、あんまり楽しくないのかね」
俺だって、全然楽しくない。ただ新幹線で無意味な時間を過ごしただけだ。
「この旅行?」
「そうだよ。それで、ダブルデートっていう話はどこに行ったんだよ。別行動したらもう終わりじゃない? 勝手に爺さんの家に戻って、メロン食おうよ」
万博公園に、二人だけで来ても面白くない。初めて来たのだから、ここで何をするのが正解なのか分からない。
俺たちが住んでいた地域よりも、若干暑い。俺の額からは、爺さん家を出たときからずっと、汗がダラダラと滴り落ちている。
「早川? この旅行さ、多分俺たちを誘ったの、笠原だよ」
「……え? どゆこと? 笠原が、武藤くんが誘ってきたって言ってたんじゃないの?」
「武藤は笠原だけを誘ったけど、笠原が俺も早川を誘わないなら行かないとかなんとか、テキトーに言ったんだよ。これ、前にもあったでしょ」
「そうなの?」
前にもあった。
それは俺と早川が、テーマパークに入場直後、武藤たちに置き去りにされるという、思わぬハプニングが起こってしまったときのことである。
あれは、園中から言われたことだが、俺が行かないと笠原が武藤と遊びに行ってくれないから来てくれとか。
結局折れて、しかも全く関係のない早川まで来ることになってしまった。早川が来ることになったのは、俺が悪いけど。
「笠原、大丈夫かな。武藤に変なことされてないかな」
「されてるんじゃない? なんなら、するために私たちと別行動することにしたんだと思うし」
それもそうか。笠原だって、変なことされてもいいと思っているから、武藤とここに来ているわけで。
「武藤は……まだ笠原と、あんな関係を続けていくつもりかな。限界があると思うんだ。笠原みたいな性格の女子が、本性クソな武藤に似合うわけないし、釣り合うこともない」
俺は早川とは目を合わせず、なんとなく空に浮かぶ雲の隙間に視線を向ける。
「……もういいよ、和人くん。笠原さんの話なんて。ここに来てから、いや、来るまでも。今まで何回同じような話してるの?」
「……え?」
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