第34話

 帰宅すると、自転車に乗っていたため気付かなかったLINEに着信が。

 とりあえず開いてみる。

 笠原からだった。


『来週ダブルデートしたいってきらが言ってるよ。どっか遊びに行こうよ』


 ……うわっ。

 笠原が武藤のこと、名前で呼んでる。最初に目についたのはそこだった。あぁ、マジで付き合い始めたんだなぁ。


 武藤のどこがいいんだろうか。だが、ダブルデートしたいっていう提案を、普通に受け入れている。多分、なんとかなっているのだろう。


「ダブルデート、ダブルデート……。あ、子分の園中は必要ないってことか」


 あれだけ武藤に協力していたのに、武藤と園中が過ごす時間が減ってしまうのは、なんだか園中が可哀想な気がした。


 スマホの画面を見ながら、自室へ戻る。課題が入っているバッグを、クローゼットの中に押し込み、ベッドに横になる。


 別にどこかに外出するのは問題ない。問題ないんだけど、問題はその場所だ。以前園中を含めたメンバーで行ったときは、俺と早川は置いていかれた。


 今回はそんなところではなく、もっとゆったりできる場所がいい。我先に、みたいな雰囲気が苦手なのだ。


* * *


 俺も人のこと言えないけど、なんでみんなパパッと恋人を作ってしまうのか。みんな誰でもいいんだろ。


 絶対にこの人じゃないとイヤだ! 的な我がままを言っていると、高校生の間にたくさんのカップルが誕生するはずがない。一生一人の人が増加するだろう。


 ただ、誰かの恋人になって、高校生っぽいことをしたいだけなのか。それとも、妥協しただけ? 付き合ってから好きになるとか? 


 こう見ていくと、誰もが人に値段を付けていくのだろうな、と思った。妥協するにも、限度というものは必ず存在するし。


 むちゃくちゃ可愛い子が、ブサメンの陰キャに告られたら。女の方に恋人がいないとしても、いくら高校生の恋人っぽいことをしたいとはいえ、絶対に成立しない。


 よく知らない人は、顔で判断する。最初に出会ったときに、タグ付けされる。


 俺だって、他の人から付けられたタグがクソだったから中学生のとき、友達が出来なかったのかもしれない。


 俺から誰にも話しかけなかった、というのもあるのだが。じゃあ、俺がクラスの人にしっかり笑顔で会話をしていたら、値段は上がるのか。


 恐らく少しは上がる。どんなに顔が悪くても。相手の良い一面や、マシな一面を知っていれば。


 自分の価値は、自分で決められる。そんな当たり前のことに気づいていながら、変えようとしない。

 そこから見える景色に、慣れてしまうから。

 


【あとがき】

 次話投稿は、今日の十八時です!

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