第32話
翌日。
とりあえず早川とLINEで約束した時間に間に合うように、家を出た。一応早川の家で勉強しなくてはならないことになる可能性もあるので、課題はショルダーバッグに入れる。
恐らく早川のことだから、まだほとんど課題なんて終わっていないだろう。夏休みは短いし、休み明けに大きなテストもあるので、テスト前に課題をやることになりたくなければ、本当に早めに終わらせておいた方がの良い。
真夏の太陽はとても厄介だ。今からこの灼熱地獄を歩くとなると、とてもやる気がなくなってくる。
「あぁ、なんでこんな日に……」
早川には言ったことは無いが、早川が俺の家に来たって別に何の問題も無いのだ。ただ、家に親がいる可能性があるからとかで、一緒に寝ないだけ。
早川の家へ向かうため、駐輪場に置いてある自転車に、乱暴に跨がる。正直、電動自転車がほしいところだが、なんか勿体ない気がして、買えていない。
顔からダラダラと汗を流しながら、俺は早川の家までの道をひたすら進んだ。
* * *
「笠原さん、本当に武藤くんで良かったのかな?」
やっと冷房の効いた涼しい部屋に来たと思ったら、また何か考えなければならないことを、早川が話題に出した。
「さぁ? どうだろ。正直、武藤と付き合うメリットがよく分からないしね、俺からしたら。まぁ、マジで嫌なら付き合うことはないだろうから、多分よかったんじゃない?」
現実なんて分からないことだらけだ。
「んで、笠原のこと話すために俺を遥々寄越したわけじゃないでしょ? LINEからして、早川のお姉さんのことだとは思うけど」
早川は少し間を置いて、俺と向き合う。
「昨日、姉が家に帰ってきたの。別に結構頻繁に帰ってるらしいんだけど、私が家にいるときに帰宅したのは、今年初めて」
「いや、それ昨日のことでしょ? 昨日は終業式で、単に俺たちの学校帰る時間が早かっただけじゃないの?」
「あ、そうかも」
「へ?」
「いやでもね? 明らかに様子がおかしかった。帰ってきたとき、なんか微妙に泣いてたの。スマホ片手に」
早川は俺に何を求めているのだろうか。早川の姉の様子から想像できる事情を、考えてほしいということか。
「スマホ片手に……。むちゃくちゃ失礼だけど、彼氏とかに振られたとかは?」
LINEで『別れよう』みたいなこと言われたとか。
「あのね、実はそれほど気になるってわけでもなくて」
「ん? 気になるほどでもないって、何のこと?」
「姉のこと」
マジか。それじゃ、何のために俺を呼び出したんだ。外、クソみたいに暑いんだぞ。
「そろそろ彼氏、作ろうかと思って。その相談」
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