第31話

 帰宅した。

 家の中は湿気が多くて、控えめに言っても状態は最悪だった。自室のエアコンのリモコンを素早く手に持ち、冷房のボタンを押す。


 ピッ。


 という音が聞こえて、一安心する。エアコンがありながら、部屋内でぶっ倒れるなどあってはならないことだ。


 早速課題に取り掛かる。


* * *


 今までに無いくらい懸命に課題をして、そのまま寝落ちした。

 起きると、机の上に開いたままのノートに、口から溢れたヨダレがたれて、ヤバイことになっていた。


「うわっ。……最悪だ」


 昨日の昼から課題に取り掛かり、全力を尽くしていたはずだが、まだ半分も終わっていない。寝落ちするまでして正解だった。この量、アホな早川は終わらないんじゃないだろうか。


 スマホを見る。随分と久しぶりに触った気がした。

 すぐにLINEのアプリを開き、トーク画面を確認する。


 早川からたくさん来ていた。


『なんか分からないけど、姉が私のいる時間に、家に帰ってきた』『働くって言ってる』『だから休学するかもだって』『私、もっといいバイト探そうかな』『なんかいいバイト、紹介してよ』『武藤くんに訊いてみるのもいいかな』『笠原さんに相談しようか』『事情は知らないけだ、姉が泣いてる』『これ、どうすればいいの?』『ねぇー、助けてよー』『むちゃくちゃ気まずい』『無視しないでよー!』


 それから十分程度間が空いて。


『明日、私の家に来られる? なんか、遊びたい。勉強終わってないけど』



「……………………は?」


 早川のLINEの内容については、分からないことばかりだった。

 早川のお姉さんについても、俺はほとんど知らないし、働くと休学にどう繋がるのか分からない。


 というか、勉強終わっていないのに、俺を家に呼ぼうとするなよ。夏休みは短いのだから、本当に早めに終わらせないと、成績優秀者ども(武藤、笠原、園中?)の遊びに、参加しないといけなくなるんだから。


 俺も人に勉強について何か言えるほど頭の出来は良くないし、課題すら終わらせられていない。恐らく、人よりも時間がかかるのだろう。


 まぁ、いいか。

 課題は、夏休みが終わる前日に、友達のやつを写せばなんとかなるし。……友達? 早川か? いや、無理だ。武藤はなんか嫌だから、笠原にしよう。それでも無理だったら、園中でもいい。


 と、こんなことばかり考えていたが……。


 ここで、ある疑問が生まれる。


 貯金を崩すのと、姉から貰えるお金で生活している的なことを言っていた早川。

 姉から貰えるお金……。

 姉が働く、みたいな発言をしている……。

 あれ?


 ———姉から貰えるそのお金、どこから湧いて出てきたものなのだろうか。



【あとがき】

 明日、更新します。

 

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