第23話

「この間の話の続き。青野はさ、早川さんのこと、好きなの?」


 この前LINEで訊かれたことだろう。俺と早川の会話を何故か盗み聞きしていた笠原が、俺に早川との関係を問い質したことがあった。笠原は、ソファーに座っている俺の隣に腰をかけて、目を見つめた。


「いや、別に? なんとも思ってないよ?」


「じゃあ、コンドームの話はどうなるの? セックスとかなんとか言ってたじゃん。あれは? あれはどうなの?」


 悲しげな表情をする笠原に、疑問符しか浮かばなかったが、俺はそれを頭から振り払い、


「そんなの、早川に聞いてくれよ。俺から答えられることは、何も無いから」


「本当に早川さんに聞いていいの?」


 何が言いたいんだろう。分からないことばかりだった。お前いつからそんなミステリアスになったんだ。


「分かった。LINEで聞いてみる」


 笠原は俺の目を三秒ほど見つめた後、ポケットからスマホを出して、LINEアプリを起動させた。


 スマホのキーボードをタップする音が、静かな部屋に響き、俺に聞こえてくる。ものすごいスピードで文字を打ち終わると、俺の方に顔を上げる。


 それも束の間、すぐにLINEの着信音が鳴って、また起動させた。


「……はぁ。やっぱり。早川さん、青野と付き合ってるってよ」


「……は?」


 は?


 俺は驚きを隠しきれなかった。早川には、もっとなんかこう……誤魔化してほしい思いがあったのだ。それでとりあえずこの場だけしのいで、また二人で話し合うつもりでいた。


 ここまで明確な答えを出されると、今何をするべきか分からない。


「……なんで嘘吐いたの? それでもう最後までクリアしちゃってるってわけね」


「クリア」


 もう、開き直ることにした。


「なんで、嘘吐いちゃダメなの? 嘘を吐かない人間なんて、この世に存在しないと思うよ?」


「まぁ、そう思うよね。……私だって、今嘘吐いてる。青野と早川さんの会話を聞いたって言ったけど、本当は聞いてない。園中からそうだって連絡が来たの」


「は? 園中? ……え、じゃあ、園中が実際に俺たちの話を聞いてたってことか?」


「うん」


「このこと、武藤には?」


「武藤には言わないって」


「あぁ、そっか」


 多分気を使ったんだろうな、と思った。武藤からしたら、先日遊びに行ったのは、笠原に告るという目的があってのことだ。もし俺と早川が付き合っていると、園中が思ってしまい、それを武藤に伝えることになれば、武藤はデートに使われた気がして、気分を悪くするだろう。


「なら、いいや。……俺と早川は付き合ってる。そういう認識でいいよ」


「なんでそんな、なおざりな言い方なの?」


 その質問には答えず、俺はリュックサックを手に持ち、ソファーから立ち上がった。


「帰るの? あ、待って青野!」


「ん? 何だよ」


「部屋、見ていかない?」


 笠原は俺の袖をしっかりと握っていた。


【あとがき】

 次話投稿は、七月十三日です。

 最近更新ペースが非常にゆっくりです。ホントにすみません。

 来週の用事が終われば、また更新ペースを戻せればいいな、と思っております。

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