第8話
生還率七割。
これはソロの数字だけど、全体の三割が命を落としている。
護符があるのにどうして生き返れないのか?
理由は簡単だ。奪われるから。
人形のクリーチャーは知力が高く、人には分からない言語で会話すらすると言う。
彼らは護符が僕らの生命線と知っているらしく、トラベラーを見つけたらまず捕まえるそうだ。
自由を奪い、護符を盗れば、あとに残るのは脆弱な人だけ。
食べられたり、復讐として惨い殺され方をしたりなんて珍しくない。
ダンジョンを探索していると人の死体や骨、そして生きたまま保存食とされている状態を見つけたりなんてこともあるそうだ。それを聞いた時僕はゾッといた。なんて怖い場所なんだとも思った。
それでも人はダンジョンへ行く。
お金の為? それもある。だけどなによりもダンジョンは成長するんだ。一刻も早くシードを壊さなければこの世界はダンジョンに飲み込まれる。
そう。僕の住んでいた村のように――
だからスミレさんがくれたこの遺書セットもあながち冗談ではない。危険の中に飛び込んでいかなければ僕らは滅ぶんだから。
ギルドから出る時、テーブルで談笑するウサギの獣人、ウサビットの二人が話していた。
「サーシャね。やっぱりダメだったみたい……」
「聞いたわ。腹を割かれて中身が全部なかったんだよね……。あの子、良い子だったのに……」
衝撃的な話をするウサビットの二人は悲しそうだった。でも悲嘆にくれるのではなく、残念だという感じだ。その表情はダンジョンに行けばよくあるとでも言っているようだった。
僕はゴクリと唾を飲んでギルドの外に出た。陽はすっかり落ちていて、眩しいくらいに星が見える。
(…………僕はトラベラーになったんだ)
ひんやりとした夜風にあたると今さらながら怖くなった。
それでもダンジョンから皆を守る為にはやめるわけにはいかない。
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