第186話 ようやく出発なのです!

「皆さん、お待たせしました!」


「ハルは助手席、ワカナは俺と後部座席だ」


「了解したのです!」


「……うん、分かった」


 こうして和幸さんの車へと乗り込み、時間通りとまではいきませんでしたが、無事に出発することができました。


「……ハルお姉ちゃん、私の服、大丈夫そう?」


「はい!大丈夫なのですよ!」


 ワカナちゃんから受け取ったのはベージュのショートパンツ。それと白の生地に薄ピンクの花柄のあしらわれたブラウスでした。どちらもサイズ的には問題なく、着心地もよく問題ナシです。


「そういえば、その服ってワカナが前にサイズ間違えて買ったヤツだったか」


「……そう。次からはネットじゃなく、服屋さんでちゃんと買う」


 カズさんによると、ワカナちゃんが去年のこのぐらいの時期に買った衣服なのだそう。ともあれ、その買い物の際のミスがあったおかげで着られる服があるのですから、このことには感謝しなければなりません!


「それにしても、和幸さんの運転で出かけるのも久しぶりな気がします」


「ああ、付き合ってた時は奈良とか行ったりしたな」


「はい!鹿さんにエサもあげたのですよ」


「そういえばそうだった。でも、それってかなり前だったような気がするな?」


「確か……2年前でしょうか?」


 私も記憶を遡ってみましたが、恐らく2年前で間違いなさそうなのです。私が今年は大学受験だという時に、気分転換として連れて行ってくださったはず……!


「……奈良、私まだ行ったことない」


「いや、行ったことあるぞ。といっても、まだワカナはベビーカーだったけどな」


 ワカナちゃんの言葉にカズさんがすぐに反応し、言葉を返されました。


「ベビーカーに乗ったワカナちゃん、想像するだけで天使なのが分かります!」


「その時の写真なら母さんに言えば見せてもらえると思うぞ?母さん、アルバム作ってたからな。特にワカナのアルバムは数が多いから、目当ての写真を見つけるのは骨が折れるだろうが」


「だとしてもです!それは骨を何本折ってでも探さなければなりません!人類の宝です!」


「おお、ハルがなんかやる気になってる……!」


 小さい頃のワカナちゃんの写真、これは何としてもカズさんのお母さんに見せてもらう必要がありそうです!


「お、盛り上がってるところ悪いんだけど、そろそろ着きそうだ」


 どうやら私とカズさん、ワカナちゃんとで盛り上がっている間にも、着実に目的地に近づいていたようです。


 そうして、和幸さんに水族館まで歩いて3分くらいの場所で降ろしてもらい、後は歩いていくことに。


「和幸さん、忙しい中送ってもらってありがとうございました……!」


「ああ。これくらい別に気にしなくてもいい。ただ、帰りは電車で帰ってきてくれ。たぶん、道が渋滞していて余計に時間がかかるだろうから」


「分かりました。おふたりは私が責任を持って送り届けますので!」


「ああ、頼む」


 和幸さんはニコリと笑みを浮かべながら、窓を閉めて自宅へと戻っていかれるのでした。

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