第171話 渓流釣りに行くのですよ!

 3月6日。今日は千早赤阪村へ和幸さんと渓流釣りに向かう日なのです!


 私は朝から動きやすい服装に着替え、身だしなみも整えて待ち合わせ場所である天王寺へと向かったのです。


「千晴。悪いな、待たせてしまって」


「いえいえ、私が早く着きすぎてしまっただけなのですよ」


「そうだな、千晴はいつも俺より到着が早い」


「そう……なのでしょうか?」


 私の言葉に和幸さんは静かに頷かれました。ですが、私は和幸さんを待たせては申し訳ないので、いつも10分ほど前に着くようにしているだけなのですが……


 そんな会話に始まり、目的地までの電車とバスでの移動が再開されたのでした。


「和幸さん、4月からはどこにお勤めになるのですか?」


「そういえば、千晴にはまだ言ってなかったか。京都にある会社に内定が出たんだ。だから、4月からは京都なんだ。今はそのための部屋を探したり、引っ越しのために荷物をまとめたりしてるよ」


 和幸さんが京都へ……!それに、内定が出たとしても準備などが大変そうなのですよ……!


「和幸さん、京都といっても広いですが、どの辺りになるのですか?」


「京都市内でも嵐山の辺になるんだが……渡月橋があるところといえば分かりやすいか」


「渡月橋……!私も名前くらいは聞いたことはあるのですが、まだ行ったことが無いのです」


「だったら、ゴールデンウィークとかにでも来たらどうだ?俺もその時までには案内できるように勉強しておくからさ」


「はい!それでは、ゴールデンウィーク辺りにでも遊びに行かせていただきますね!」


 まさかのゴールデンウィークに京都へ遊びに行くことに!ですが、その頃には大学の前期の授業が始まっているでしょうから、課題のこととかを考えると、その時になってみないと分からないでしょう。それは、和幸さんのお仕事も同じでしょうか。


 そうして和幸さんの4月からの新生活に向けての話などをしているうちに、最寄り駅に到着です!そこからはバスに乗って、山道を移動していくみたいなのですが、今から渓流釣りが楽しみで、ワクワクしてくるのです!


「そうだ、千晴は4月から2回生になるわけだが、どんな授業を履修したいとかは決まっているのか?」


「私は教職課程を取ろうかと考えているところです」


「となると、千晴は教師になりたいのか」


「昔から人に何かを教えるのが好きなので、教師をしたいと思っているのですが……変でしょうか?」


「いや、千晴は向いていると思うぞ。教師は」


 和幸さんは優しげな眼差しで私を見ておられました。その表情に私はホッと無い胸を撫でおろしたのでした。

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