第125話 ぎこちない空気

 お父さんがいることによるぎこちない空気。これだけでも何とかしなければ、イベントにも支障が出てしまいます……!


「カズがこのパーティのリーダーだったな」


「あ、ああ。俺がリーダーだが……」


「なら、俺に指示を出す時は呼び捨てで頼む。リアルでは年が上だからなどと気を遣わなくても良い。まあ、呼び捨てはカズだけじゃない、他のみんなにもお願いしたい」


 お父さんは真剣な表情でカズさんをはじめ、みなさんを流し見ながら話をしていました。私はどうなることかとドキドキしながら、見守ることしか出来ませんでした。


「……分かった。カツヒロ、戦闘中盾役は任せたぞ」


「……ああ!任せておけ!」


 カズさんがお父さんを初めて、プレイヤー名で呼ばれたのです。そのことにお父さんも嬉しかったのか、瞳がウルウルしていて、私はおかしくて笑ってしまったのです。


 なにせ、大盾と大斧を装備した鎧姿の大男が目をウルウルさせているのですから。これは私以外の方でも笑わない方が無理だと思うのですよ!


「……プッ」


 カズさんも堪えておられたのか、ついに笑いだされたのです。そこからは皆さん遠慮なく笑っておられました。


 そうして私たちのいる空間が笑いに包まれ、これまでのぎこちなく凝り固まった空気がほぐれました。


「……そうだ、イベントの前に全員のステータスを見ておかないか?」


 カズさんからの提案に間髪入れず、私たちは全員YESと答えました。


「じゃあ、まずは言い出しっぺの俺からだな」


 ―――――


 プレイヤー名:カズ

 職業:戦士 《ウォーリア》

 炎魔法レベル2


 累計ステータス値11444

 体力 2079

 魔力 1977

 力  2200

 耐久 1789

 敏捷 1583

 魔耐 1877


 装備

 頭   【白金の兜 《耐久+61》】

 体   【白金の鎧 《耐久+221》】

 右手  【白金の大剣 《力+217》】

 左手  【】

 腕   【白金の篭手 《耐久+35》】

 脚   【レンジャーブーツ 《敏捷+35》】

 装飾品 【】【】【】


 ―――――


「俺は前回に比べれば強くなったが、やっぱりみんなに比べれば弱い。まだまだ強くならないとな……!」


 カズさんは少し反省しているかのような表情でしたが、カズさんが受験生でSdnGをする時間が思うように取れないのは知っています。


 ですから、受験が終われば思う存分SdnGをやってほしいのです!


「あと、カズ兄の炎魔法レベルがひとつ上がってる」


「ああ、やっとレベルが上がったんだよ。このままもっとレベルとかをガンガン上げていきたいんだがな……」


 ワカナちゃんと話しているうちに笑顔になるカズさんを見て、私もすごく微笑ましい気分になるのでした。

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