第122話 マサミさんの本音②

「だから、アタシもアヤのクランを抜けようと思うんだ」


 マサミさんの言葉を私たちはただただ沈黙という形でしか受け止めることができませんでした。


「マサミ、それは本気なんだな」


「うん。冗談じゃこんなこと言わないよ」


 そう言って笑うマサミさんの表情から先ほどのような暗い影は薄くなっているのが、私にも感じられました。


「とはいえ、次の第9回イベントはアヤのクランのメンバーとして参加しなきゃいけないだろうけどね」


 そうです。第9回イベントが3日後に開催されるのです。確かに、それまでにクランを抜けるとなると色々と面倒なことになりそうなのです。


「でも、1月中にはケリを付けて、抜ける。それで、ここからはこの場にいるみんなに確認しておきたいんだけど……」


 マサミさんはそこまでおっしゃられると、少し深呼吸をなさって間を開けられました。私たちはマサミさんから何を言われるのか、おおよそ察しがついていたので、その言葉が紡ぎ出されるのを静かに待ちました。


「アヤのクランを抜けたら、このパーティに入れてもらってもいいかな?」


「……もちろんです!」


「ああ、もちろんだとも」


 私とユーカさんにまず異論はありません。あとはみなさまの反応次第というところでしょうか。


「俺は強いメンバーが増えるなら大歓迎だ」


「……一度は戦ったけど、今度は一緒に戦いたいからオッケー」


「私も反対する理由はありません」


「オレもマサミなら全然オッケーだ」


 カズさんもワカナちゃんもルビアちゃんも。そして、テツさんも。みなさん、笑顔でオッケーを出しました。


「ボクも姉さんと一緒のパーティは嬉しい!」


 マサルさんもこれまでに見たことのない、良い笑顔でした。ですから、後はマサミさんが勇気を振り絞ってアヤさんのクランを抜けるだけ。


 ですが……


「マサミ、少しいいか?」


「……?うん、全然大丈夫だけど……」


 なんと、ユーカさんがマサミさんを工房の奥へと拉致していかれたのです!テツさんはフフッと笑みをこぼされていますが、何が何やらさっぱりなのですよ……!


「ハル、ユーカはハルがアヤといずれは仲直りして4人でSdnGをしたいと考えていることをマサミに話に行ったんだよ」


「それは……!」


 そうです。私がマサミさんのアヤさんへの想いを聞いてしまって、自分から切り出すのが怖くなってしまい、胸の奥にとどめていた話題です。それをユーカさんは察してくださったということに……!


 そうして、ユーカさんとマサミさんが工房の奥へと姿を消されてから数分後。工房の奥からおふたりが姿を現したのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る