第12話 噂の真相
「あの噂、流したの俺なんだ」
「え……」
私は突然の池谷先輩に言葉を失いました。それより、理解が追い付きませんでした。
その後、私と先輩は電車を降りました。
それにしても、どうして池谷先輩がそのような噂を流したのでしょうか……?
「千晴、俺ともう一度付き合ってくれないか?」
「えっと、それは……?」
……質問の意図が全く分かりません。一体噂と何の関係が……?
「俺、お前から別れを切り出されたとき。オッケーしただろ?」
「はい、もっと引き留められたりするのかと思ってましたです」
そうなのです、逆にあっさりと別れることが出来て拍子抜けしたような気分ではありましたが。
「まず、千晴に対して変な噂を流して悪かった。こうすればお前と話す機会も出来るかな……とか思ってしまったんだ」
池谷先輩はその後に「悪い」と付け足しました。
「……やっぱり、俺とはもう付き合いたくはないか。こんな別れた後も一人で引きずるような男とか、嫌だよな」
そういう池谷先輩の表情は儚げな表情を浮かべておられました。
「池谷先輩、私は別に先輩のことが嫌いだから振ったわけではないのですよ」
私は先輩に別れ話をしたときに「先輩の卒論や就活やらの邪魔をしないために」と伝えることをしていませんでした。
「……どういうことだ?」
「私は先輩……いえ、和幸さんの就活や卒論を書いたりすることを邪魔をしてしまってはと思ったので、先輩に別れ話を切り出したんです」
「……そう……だったのか」
「そうです」
「……悪いな。俺、お前に嫌われてしまったのかと思って……」
そんなことを言いながら悲しそうな雰囲気を纏っている先輩を私はギュッと抱き寄せました。
「私が和幸さんのこと、嫌いになるわけないじゃないですか」
「ああ……!」
私は駅のホームで涙を流す和幸さんを夕日に照らされながら抱き合いました。
……噂の真相は和幸さんと私との別れ話で生まれた誤解から始まった物でした。
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