第11話 リアルでの再会

 夕方。私は家に帰ろうと大学を出ました。


「あら?ハルじゃない」


 声に名前を呼ばれた私は振り返りました。


 振り返ると、そこにはアヤさんとマサミさん、ユーカさんが並んで立っていました。


「えっと、その……」


「ハル、アンタ大変な噂が流されてるわね~」


 ……噂?私が避けられていたのはもしかしてそれが原因なのでしょうか?


「アンタが池谷先輩をフった後も金をゆすったりしてるんですってね。」


「わ、私、そんなことは……!」


「してるんでしょ?アンタにフラれた後も元気がないって」


「……でも私は、そんなゆすったりなんてしてないです!」


「どうかしらね。噂の本人が言っても誰も信じないわよ」


 私はマサミさんやユーカさんに助けを求めようとしましたが、二人とも別々な方向を向いておられました。


 ……私はとりあえずこの場から離れたい気持ちでいっぱいでした。


 私が黙っている間も次々にアヤさんから言葉のナイフで心を抉られていくような気分です。


 ……一体、私はどうすればいいのでしょう。


「……千晴?」


 私が振り向くと、そこに居たのは池谷先輩でした。


「あら、池谷先輩!その女に近づいてはいけません!あなたはこの女にゆすられてるんでしょう?」


「……何を言ってるんだ?澤木」


 ……澤木。それがアヤさんの名字です。


「俺は千晴からゆすられたことは一度もないぞ」


「……え、でも……!」


 アヤさんは戸惑った様子でオドオドしておられました。


「ほら、行くぞ。千晴」


「ふぇっ!あ、あの……池谷先輩!?」


 私は池谷先輩に手を握られて走り出しました。


 池谷先輩の手は温かくて、何だか心までそのぬくもりが伝わって来るかのようでした。


「……悪いな」


「えっと、何が……ですか?」


 大学を出て、私たちは電車に乗りました。そんな中、池谷先輩にそんなことを言われました。


「あの、俺が千晴にゆすられているって噂……」


「噂ですか?私は気にしてないので大丈夫ですよ?」


「違う、そうじゃない」


 夕日に照らされて光る池谷先輩の顔には汗がにじんでいました。何やら緊張しているのでしょうか?


「あの噂、流したの俺なんだ」


「え……」


 私は言葉を失いました。それより、理解が追い付きませんでした。


 どうして池谷先輩がそのような噂を流したのでしょうか……?

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