第6話 良い匂い

「オラア!」


 そんな力強い声が聞こえ、目を開けてみると三体のコボルトは光り輝く粒子となって消えていくところでした。


「おい、大丈夫か!?」


「あ、はい!大丈夫です!」


「だったら、ここから離れて俺の戦いぶりを見てな」


 その大剣を担いだ男性プレイヤーに促されるまま、私は後ろの岩陰まで下がりました。


「……お、お姉さん、大丈夫ですか?」


「えとえと!どちら様ですか!?」


 どこからともなく聞こえてくる声にビックリしました。ですが、本当にどこにおられるのでしょうか?


「……私はカズ兄……あそこで大剣振り回してる男の妹です。……リアルの」


「えとえと、妹さん?私はケガなどしていないので大丈夫ですよ!」


「……ウソ」


 そんな声と共に岩の上から降りてきたのは栗色の髪をハーフツインテールにした小さくて可愛らしい見た目をした方でした。


「……体力ゲージ、だいぶ減ってる」


 妹さんはそう言って私の足元に屈みました。それからは何やらポケットをガサゴソと探しておられました。


 そして、取り出したのは緑の液体の入った瓶。それはポーションでした。それをためらいもなく私に使ってしまわれました。


「はわわわわ!妹さん!どうしてポーションなど使ってしまわれたのですか!?」


「……困ってる人を見たら助けるものだから」


 この子、めちゃくちゃいい子です!


「ギュッて抱きしめても良いですか?」


「……ん。大丈夫」


 私はその子にお礼のハグをしました。


「はっ!そうです!妹さん、お名前は何とおっしゃるのですか?」


「……ワカナ。私、ワカナ」


「ワカナちゃん!可愛い名前ですね!」


「……お姉さんの名前は?」


 自分から名乗らずに人様に名乗らせるなんて……私、なんてことを!


「私はハルです!」


「……ハル……お姉ちゃん」


 ……お、お姉ちゃん……!何て良い響きなんでしょう!


「ワカナちゃん!大好きです!」


 私はワカナちゃんに抱き付きました。ワカナちゃんは最初こそ戸惑った様子でしたが、ワカナちゃんも私を抱きしめてくれました。


「……おい!ワカナ!何ゆっくりしてるんだよ!手伝ってくれ!」


 向こうでコボルトと戦っている大剣の人を尻目に私とワカナちゃんはハグを続けました。


 あと、ワカナちゃんから花をくすぐるような良い匂いがします!癒されます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る