水晶騎士(1)

「それでさ、すっげぇ強え騎士様にあってさ、今度稽古をつけてくれることになったんだよ。」

「冒険してるねぇヤッコ君にエルエちゃんは。」

 リコットさんの家の1階で俺とエルエとリコットさんの3人は一緒に夕飯を囲んでいた。リコットさんは親しい人達と談笑しながらする食事が好きで、俺達もその厚意に甘えさせて貰っている。


「そういえばリコットさん、マバロニア王国って聞いたことある?」

「マバロニア王国?何処かで聞いたことがあるような、と言うよりも何処かで聞いたんだけどそれがどこで聞いたんだっけ?......って感じかな。ごめんね。」

「ガンタとネラにも聞いてみるか?ネラはともかくガンタも意外な事に色んな本読んでるし。」

「へー、なんか意外。ガンタってもっと『座ってられるかー!!』とかいって1分も持たないイメージなんだけど。」

「本当に色々と意外なヤツだよな。」



 ーーーー



「そんなイメージ持たれてたのか俺......」

「悪かったってば。」

 所謂、おバカの印象をエルエに持たれていた事を本人から聞かされたガンタはその大きな身体を縮める。

 しょぼくれたガンタはブツブツと言う。

「......本ってのはいいもんだぞ。絵や文字を読むだけで誰にでも英雄の冒険ができるし、自分の中の世界も広がるし、俺が本が嫌いだとか......まあ良いけど。で?何を聞きたいって?」

「それなんだけど、『マバロニア王国』って聞いた事ある?」

「マバロニア王国?えっとー何処かで聞いた様な......おいそんな残念な顔すんな。ため息をつくな!!ここまで出てきて......そうだ...!!なんかの物語、童話で見た!!」

「童話?なんの?」

「え。えと......」

 更にくい込んで聞くとガンタは左の人差し指で自分の頬をポリポリと掻いて言い淀んだ。どうやらそこまでは覚えていなかった様だ。


「それ、『水晶騎士』や『石食いしはみ龍』のお話に出てくる街、ですよね。街の至る所まで大理石で出来た伝説の王国......です。」

 ボソリとネラが言う。ネラの言葉に一同は、なぜ出てこなかったのか、とハッとする。


 興奮してネラの両手を甲から握る。

「ふぁぇっ!?」

「それだよネラ!!なんで出てこなかったのかんだろうな!何度も見たはずの名前なのにな!!ありがとうネラ!!」

「い、いえ......物語の絵本や小説とかは大好きなのでよく寝る前に読んでるので、お役に立てて、良かったです.........えへへ。」

 照れて赤く染めた顔と緩んだ口角を隠すようにネラは俯いた。


「あースッキリした。これでなんの気兼ねもなく行けるぜ。」

「まさかあのマバロニア王国が実在したなんてね。このことをギルドに報告したら、大金貰えたりしてね。」

「確かに。あ、でも止めとこうぜ変な奴らが来るかもしれないし。」

「それもそうね。」

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