新米冒険者の危機(3)
「ハア、ハア、見つかんない......」
「しょげんのは分かるけどよエルエ、こんな広い森の中でちっちゃいのを探すんだ。当たり前だって。」
「励ましたいのか諭したいのかどっちなの!?」
「はぁ?何言ってるんだか。励ましてるに決まってんだろ。エルエがどんだけ魔法学校に行きたかったかなんて村出る前から知ってンだよ。少なくとも俺はお前にだけは諦めて欲しくない。」
「っ!?あ......ありがと.........」
(コイツはこういう事を臆面もなく言うから......)
黒葉杉の森はアイアン、ブロンズタグの低級冒険者には少々厳しく、スチール以上の冒険者からしたら実入りの悪い所で、大雑把にしか探索は済んでおらず、やはり地図も大雑把である。
俺達が既に黒葉の森に入ってエルエの生徒証を探し始めてから既に2時間半が経っていた。
それでも手がかりさえも見つからない。そもそも探す範囲が広すぎる。
「昼時だけど何も持ってきてないよな。あ〜腹減ったー!!」
「確かに何か食べ物持ってくれば良かったわ。ん?まだ青っぽいけど黒葉杉の実が生ってる!!あれを食べておこう!!」
「おお!!ラッキーじゃん俺達!!ん?ああいいよ...俺が採るから.........ん?おい!!これ見ろ!!」
「なに?」
俺の指が刺したのは刃物で切られたヘタ。それもつい最近の痕跡である。これは、この辺りが自分たちが昨日通った所である目印という事。ここから、俺達とオクトマンティスが通った道を見つけられれば、かなりの手がかりになる。
「それを食ったらさっさと行こうぜ!!」
「うん!!諦めてたまるもんか!!」
それから直ぐにオクトマンティスが開いた道は見つかった。オクトマンティスは村の小さな家程もある巨体の上、両腕の鎌を振り回しながら進むため、けもの道にしてはかなり広い道幅になる。
しかし、道を見つけて進み始めてからもうすぐ30分程になるというのにまだ見つかっていない。おそらくそろそろ例の場所に出るだろう。
「もしかしてあの黒騎士さんが拾ってくれてたりするのかなあ。」
「そうかもな。まだここら辺に居てくれればいいけど厳しいだろうな.........」
「あっ!抜け口が見えた!!」
森を抜けた平原にはやはり例の黒騎士の姿は無かった。あるのはそこらに生えてる低木草や角張った岩くらいだ。この平原は広々としているが木々が周りを囲っていて森の終わりという訳ではないらしい。
「オクトマンティスの死体もそのまま残ってるや。鎌と脚を持っていこ。」
「この先草原は終わってるけど森が割れて道になってるよ。行ってみよう。」
道は新緑のトンネル。足場は磨り減った平らな白い石と砂が
「あ!!火の
「あ、いーなー。ちっちゃいの1個でも1000ウィルするやつじゃん。」
「いいでしょ。あげないわよ.........いや、やっぱりいいや。あげるヤッコ。」
「え、怖っ、どうしたの急に。」
「ただのお礼よ。いらないの?」
「いる。ありがとう.........ん?あれ!!」
「今度は何?......え?嘘でしょ!?」
指を刺した先には俺の顔よりも一回り大きい
「こんな所に水晶がこんなにあるなんてな!!大発見だ!!」
「ええ、思わぬ拾い物ってやつね!.........へ?」
「どうした?また水晶があったのか?」
「あったなんてもんじゃないわ。あれ見て......」
エルエがの向く方向に俺も振り向く。視線の先はもう道も終わり、また開けた場所になっていた。
「言うならば、あれは『水晶の地獄』よ。」
「嘘だろ.........?」
眼前に広がっていた
地面から逆さまの
火にかけられているのかと錯覚する底部に乾いた血糊の付いた
刃物を持った盗賊と思しき人々が中に封じられた
それ以外にも無数大きなの水晶が乱立している。
「どういう事なの?不気味......ちょっとヤッコ!さすがにこれを持っていこうなんて言わないでよ!!」
「言わねえよ!!それよりここって何かとんでもない魔物とかでもいるんじゃっ、たあ!?」
他所を向いていたせいで思いっきり何かにぶつかった。
「......たたた、なんだこれ?真っ白い石の壁?これは...大理石か?」
「これ城壁ね。凄い、門や
「ああ、ここまで来てくれたんだね、ヤッコ君にエルエ君。」
聞き覚えのある声がして音の元、上を見上げると、昨日の黒騎士が城壁の上にいた。
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*
オレンジ色〜赤色の水晶の1種。この作品世界では火の魔力を宿す。
*作品世界における宝石・水晶は魔力を多く含んでいる(水晶は扱いやすさ・産出量が比較的優れている)。他作品における魔石の様な扱い。
*
縞状の模様が特徴的な鉱石。主成分は水晶と同じ二酸化ケイ素。作品世界では地属性の魔力を宿す。
*
濃紺〜黒色のとても固い水晶の仲間。溶岩中のケイ素が急激に冷やされてできる。古くは刃物替わり等に使われた。作品世界では属性魔力を持たない代わりに、表面は固く薄い魔力の障壁が覆っている。
淡〜濃紫色の色つき水晶の一種。作品世界では闇・幻惑の魔力を宿す。
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