第2話 監督より町へ

本田様


映画監督の藤井です。この度は撮影をお許しいただき、誠にありがとうございます。サポートまでしていただけるとのこと、大変心強いです。クルー一同、まだ駆け出しでございますので、何かとご面倒をおかけすると思いますが、宜しくお願い致します。


台本と撮影計画書の提出の件、了解致しました。撮影時期はちょうど10月頃を予定しております。風花祭については事前にホームページで拝見し、ぜひ作品に取り入れたいと思っておりました。風花だよりでの告知の件もぜひ進めてください。


昨年のコロナショックでは我々映画業界も大変な痛手を被りましたが、観光産業はさらに深刻な状況と認識しております。知人に一人、旅行代理店に就職するはずが、内定取り消しになった者がおります。今度の映画はあくまで「映画」として撮影しますが、風花町のPRにも貢献できれば幸いです。


さて、現時点で考えているストーリーをお伝えしておきます。


主人公は若い男性で、旅の絵描きです。似顔絵や風景画を描いて日銭を稼ぎながら、全国を気ままに旅しています。これは、実際に絵が描ける役者をすでに確保してあります。


ある日、主人公がいつものようにお客の似顔絵を描いていると、あとから来たお客が「一枚頼める?」と言ってきます。割り込みのようになってしまったのは、先に来ていたそのお客が、彼にしか見えない幽霊だったからなのです。


……と、自分の中で固まっているのはまだここまでなのですが、とにかく絵描きと幽霊の交流をメインに、心温まる物語にしたいと考えております。幽霊といっても怖い感じではなく、親しみやすくコミカルなイメージです。


「風花祭で告白すると成就する」というお話を聞いて、「恋愛」を幽霊の未練にしようかと考えているところです。この路線でのタイトルは仮に『きみがすき』と付けました。ベタですが、パッと思い浮かんだのは、雨宿りをきっかけに恋に落ちる回想シーンです。


恋愛方面で行くというのはまだ本決まりではないのですが、いずれにしても回想は使うことになると思います。地元の高校生の皆さんをキャスティングさせていただくことは可能でしょうか? 町としてご了承いただければ、風花高校にご協力を要請したいと考えております。


それと、この作品の予算はクラウドファンディングで募る計画です。タイトルやストーリーラインが固まったら募集を開始します。つきましては、事前に募集要項をお送り致しますので、お手数ですがお目通し願います。

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