第12話 "神"の諡

 2020年 現在、歴代天皇126代のうち、漢風諡号に"神"という特別な字を贈られているのは、わずか3名のみである。すなわち、

  初 代 神武天皇(始馭天下之天皇ハツクニシラススメラミコト

  第10代 崇神天皇(御肇国天皇ハツクニシラススメラミコト

  第15代 応神天皇

の3天皇だ。

 神の字を贈られた この3天皇は、一説には それぞれ王朝の始祖だったと高察されているが、このことから三王朝の交代が想定される。

 だが、私は この案件は正史編纂の過程に生じた不具合バグだったのではないかなと胸算している。

 当時 政権内では2つの勢力が対立しており、一方の勢力(天武側)が構想した内容を、後で政権を担った もう一方の勢力(持統側)が自らの都合が良いように書き換えたのではないかと私は検討していた。

 後の政権が 前の政権を優越マウントしようとする場合、自ら もしくは その関係者を相手より高い位置に押し上げる,あるいは 先んじた存在に仕立て上げるのが 1つの方法だ。神の字を贈られた前2者(神武・崇神)は もともと同体(ハツクニシラススメラミコト)であり、元来の初代大王に先立つ存在として、付与・曲筆を経て、後の政権に だったのではないかと私は揣摩臆測していた。

 畢竟、私は 第15代 "武神"応神天皇こそ、正史『日本書紀』の編纂命令者 天武天皇が 元来 企図していた初代大王だったのではないかと探究している。天武天皇は蘇我氏の人物だったと私は考えているが、第15代 応神天皇の治世前後で が華々しく活躍していた。


 歴代天皇の中で、漢風諡号に"神"の字を贈られた人物は 3名のみだが、実は それ以外にも、"神"という字を冠する人物が存在している。それが応神天皇の母 神功皇后だ。

 "聖母しょうも"神功皇后は戦前の著名人であり、「三韓征伐」などの事績から4世紀頃の人物だとも見受けられているが、干支などから計算してみると、2〜3世紀頃の人物であり、その紀伝内には 3が引用されていた。邪馬台国というのは、言わずと知れた女王 卑弥呼ヒミコとその宗女 台与トヨ(壹与)の治めたもうた国である。

 "神"という字は 始祖に贈られたのではないかと一説には推量されているが、しかして、かの女丈夫にも、前の事績のみならず,子である応神天皇とともに始祖と目されるに値する伝説が残されていた。

 なお、神功皇后が4世紀の人物だと 時に勘案されるのは、おそらく 後に記録が付加されるなどの脚色がなされたからであろう。それによって 時代が移されなかったのは、動かすことによって タタられるのが恐ろしかったのか…

 あと、初代天皇の名前についてだが、応神(原 初代)ではなく、神武(新 初代)に、 "彦火火出見"の名があてられているのも、タタリとの兼ね合いだろう。

(初代は あくまで 彦火火出見!!)

 山幸彦(=彦火火出見)が 比定されているのが 天智とも天武とも解釈できそうなのも、同様に その辺の配慮があったのではないかと私は心当てをしている。

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