第11話' 大国主と大物主(後編)
けれども、遠ざけるとはいっても具体的にどうすればいいのか? 大体 タタリそのものを抹消すればいいだけの話ではないのか? そうはいったものの、タタリを抹消しようものなら、怖くて何が起こるのか皆目見当がつかなかった。
ここで1つ思いつくのが、大国主と別の神との間の中身の交換である。恐らく全く無関係な者は 先祖を祀れないことから、その間には血縁関係があったと考えた方が良いだろう。大方 その神は初代天皇の傍らに控えていただろうが、初代天皇には 最終的に 持統の孫 文武が投影されていた。結局は、これを嫌って ハツクニシラススメラミコトは 神武天皇(初代)と崇神天皇(第10代)に分けられたのではないだろうか?
そして、後者にタタリの記録を付随させることによって、時の権力者と近しい存在からタタリの記録は遠く離された。
私が 大国主の中身が交代したと考える所以として、大国主の子孫の動向がある。
大国主には 元来 蘇我氏の人物が、次いで 持統の政敵 高市皇子が投影されていたと私は臆度しているが、大国主の孫娘は2名 天皇家に嫁いでいた(『日本書紀』)。
大国主--事代主-----媛蹈鞴五十鈴媛
∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ ∟ 五十鈴媛 ∵∵ || ∵∵
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鎌足---不比等-------光明子
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∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ ||--- 聖武(45)∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ 草壁 - 文武(42)∵∵∵∵∵∵
ここから、大国主の中身が さらに変わっていることが伺い知れるが、多分 大国主が国を譲るという穏健な形で 豊葦原中国を明け渡しているのも、これと関係してのことだろう。
大国主と中身を交代したのは 大物主だと私は思料しているが、その人物は 初代が天智天皇に設定されていた際にくっついてきた存在であり、その正体は 蘇我氏と血縁関係がある,物部氏の人間だったのではないかと私は愚察している。"物"の一字が共通していることは言うまでもないが、「大国主の国譲り」と似たような話が 物部氏の祖先神 ニギハヤヒ(初代 神武天皇の対立者)にも存在していた。
そして、この特殊な生まれに、彼が蘇我氏を裏切る理合いがあったのだろう。彼と彼の息子は 天智・持統 父子の側近として活躍していた(詳しくは別の機会に)。
大物主のタタリを見事 鎮めた崇神天皇は、その諡に"神"の一字を贈られている。一説には、上記の事績を称えて その字が冠せられたとも考えられているが、神とは人間を超越した存在。その字を贈られた天皇はたった3名のみで、彼らはそれぞれ王朝の始祖だったのではないかとささやかれていた。
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