第9話' ハツクニシラススメラミコト(後編)

 天武の構想していた二王朝の交代は、持統によって 万世一系に改変されたと私は臆度しているが、初代はあくまで天皇家の者であるべしという強い想いから端を発したであろう正史の一連の改変は 結果として 血生臭い王朝交代の連鎖の抑制に一定の寄与をしたものと私は思料している。

 初代 神武天皇は 別名"ハツクニシラススメラミコト"と言うが、その名は恐らく持統によって命名されたものであり、そこに強烈な自己主張の匂いが嗅ぎとれた。

 もともと 天武が構想した初代は 持統が創った初代'ハツクニシラススメラミコトより後につけられたと私は拝察しているが、後の政権が前の政権を優越マウントしようとすれば それは当然の措置だった。この元来の初代大王が誰になったかは勿体つけて後述するが、この初代'が誰にあたるかは想像に難くないだろう。

 ただ、実は ハツクニシラススメラミコトと呼ばれる天皇は 2名存在していた。

 1人は言わずと知れた初代 神武天皇であり、もう1人は 四道将軍の活躍や大物主の呪いで知られる第10代 崇神天皇。前者には即位前記はあるが 即位後の記録が乏しく、後者は即位前記がなく 即位後の記録が豊富であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る