第7話' 虚栄(後編)

 こうして見ていくと、持統はが好きなのではないかと思えてくるが、元号についても それは当てはまるのではないかと私は踏んでいる。

 この国で初の元号は 645年の"大化"とされているが、それには疑義も示されており、私は 次の"白雉"にあたる元号が この国で最初のものだったのではないかと検討していた。

 649年、大陸の唐王朝は 朝鮮半島の一国 新羅しらぎ自国の元号を使うようを持ちかけているが、それに対し、対岸の この国でも紛糾が巻き起こり、その回答が独自の元号を用いるということだったのではないだろうか?

 天武の次代 持統は 天武から象徴となる存在や端緒となるものを奪い、新たに造成しているが、もしかすると それは、この時代に誕生したとされる称号や国名などにも及んでいたのかもしれない。


 自らが優位であること,格上であることを示すことは虚栄心を満たすとともに、対立勢力に対する政治的牽制ともなる。それらは一体セットで切り離せないものであるが、先立つ存在であることを示すだけなら 二王朝の交代の枠内でも可能だった。

 壬申の乱の勝者 天武天皇は 二王朝の交代をもって 自らの正当性を示し、天智の娘 持統も一旦は それを受け継いだ上で格付けマウントを行っていたと私は想像しているが、いつしか 彼女は その枠組み・概念をぶち壊し、現在にも繋がる新たな体系を創成して 現状の変更を狙ったのではないかと私は妄想していた。

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