第7話 虚栄(前編)
私は、天智の娘 持統は 先代 天武天皇を否定したかったのではないかと愚慮している。具体的に それがどのような場面で現れているかと言えば、大方、天武が創り 据えていたであろう象徴的な地位 及び 存在を、持統女帝が自分色に塗り変えていると思しきところだ。そこから 持統の天武の路線を受け継がない,自分の意志を優先させるという強い思いがうかがえる。
持統がそのような態度をとったのは、多分に、天武の本当の素姓ゆえであったろうが、そこには、他にも人間の根源的な欲求の発露が見て取れた。
皇祖神 天照大神は 天武の次代 持統女帝が投影されていると憶測されている。彼女は自らの孫である文武に位を譲っているが、その事績が天照大神の「天孫降臨」神話に投射されたと推知されていた。
史書編纂命令者である天武ではなく その后 持統が最高神として崇められていることから そこに何らかの悶着があったことが垣間見えるが、地盤の弱かった持統が天武のつくっていた最高神にあやかったという可能性も考えられる。
天照大神には 、「天岩戸」神話の逸話から もともと日本史上初の女帝 推古天皇(第33代)が投影されていたことが拝察されるが、推古天皇は 歴とした天皇家の人物であり、持統女帝にとっても 先祖筋の存在に当たっていた。
ただ、伊勢神宮に祀られる もう1柱の女神の存在を考え合わせると、やはり持統は不敬を働いていたのではないかと私は判じている。
かの神宮の
豊受大神の役割は 天照大神の御飯炊き係であるが、それは推古女帝の名称 豊御食炊屋姫と近似していた。
ちなみに、"
皇祖神と並ぶ象徴的な存在として 初代天皇が挙げられるが、"天照大神=推古女帝"を起点として考えると、かの天皇には 第42代 文武天皇が当てはまる。文武天皇は 持統女帝の孫であり、彼女より皇位を譲られているが、このことからも持統の所業が見て取れる。
初代 神武天皇は 別名"彦火火出見"というが、その名は 祖父にあたる山幸彦と同名であり、もともとは 山幸彦が初代天皇だったのではないかとも囁かれていた。果たして、それは一面としては正しく、大方 持統は天武から初代天皇の座を奪ったのだろう。
推古
||
敏達-⬜︎-舒明-天智・天武-草壁-文武
天照
||-⬜︎-ニニギ-海幸・山幸-草不合-初代
スサノオ
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