第6話 王朝交代と史書内容の変遷(前編)
この国の王権は万世一系であり、王朝交代など一度もなかったと通説はされている。
だが、これに対して 否定的な見解も存在していて、
第10代 崇神天皇、
第15代 応神天皇、
第26代 継体天皇...
他にも、探せば いろいろ出てくるだろうが、それらの天皇の代に王朝交代したのではないかと囁かれていた。
これらの学説についての詳述は避けるが、ここで 私の意見を述べてしまえば、それらは一部 実際に起きていたかもしれないけれど、その多くは 時の権力者の都合によって惹起された史書編纂とその改変によるひずみだったのではないかと私は愚察している。
正史『日本書紀』は当代の天皇を討ったと思しき天武天皇がその編纂を命じていたが、かの歴史書は 天武の次代である持統女帝に乗っ取られた感があった。
壬申の乱の勝者 天武天皇は その本当の素姓を隠さんとしたと憶測されているが、私はこれに疑義を抱いている。万世一系というのはあくまで天皇家の都合であり、天武が他氏族出身であることが事実ならば、その彼がそれに従う謂れはないはずだった。
確かに、"太閤"豊臣秀吉が天皇の落胤と噂されるように、漢の高祖 劉邦が赤龍の子だという言い伝えがあるように、新しく権力の座に就いた人物が 周囲が支配を甘受しやすくなるように、血統を偽るという細工をすることはあったかもしれない。
ただ、それは 概して 出自が卑しかった場合の話であって、天武天皇の出身氏族はそうではなかったのではないかと私は判じている。古代史の有力豪族 蘇我氏は、天武以前の段階で、一度 至尊の座に就いていたのではないかと私は探究していた。
そしておそらく、天武天皇は それを前面に押し出し、神話の時代から 天皇家と蘇我氏, 2つの血統・王朝 の 交代・持ち回りを画策。もって、自らの政権の正当化を図ったのではないだろうか? 天武の先代 天智天皇の時代の記録には、中国では王朝交代を意味する "天命将及乎"との文言も用いられていた。
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