第94話-ライト・オフ-

 その日、部屋の電気を消したカズヤは、部屋の隅に妙な気配を感じた。


 おかしい。

 自分は確かに一人暮らしのはずだが。


 だがなんだろう。

 見えるわけでもないし、何か聞こえるでもないのに強烈な存在感を放っている何かが、確かに部屋の隅にいる。


 なんとなく確認したいような気がして、カズヤはもう一度照明のスイッチを押した。


 蛍光灯の明かりに、部屋中が照らされる。


 やはり、何もいない。

 それどころかさっきまで強烈な存在感を放っていた何かもどこかへ消えてしまった。


 いや、きっと気のせいだったのだろう。

 もう一度部屋の明かりを消し、改めて床に就くことにした。


 いやいるわ。

 絶対何かいるわ。


 さっきと同じあたりに、何か嫌なものがいるのを確信する。

 今度こそ気のせいでも勘違いでもない。


 確かに何かがいる。


 別に何かをしてくるわけではないが、なんとなく不気味で、気になって仕方がない。

 このままでは安心して眠ることも出来ないだろうし。


「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ……」

 とりあえずそれっぽいことをしてみた。

 全く効果はなかった。


 仕方がない、もう諦めるか。


 カズヤは、電気をつけたまま寝ることにした。

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