第88話-たこ焼き-

 ソースの匂いがほのかに香る湯気。美しい焦げ目。

 怪しい屋台で少し不安だったが、なかなかどうして、おいしそうなたこ焼きが出てきたものだ。


 さっそく一口頬張ってみると、ソースの香りが口の中いっぱいに広がり……。


 ガリッ!!


 妙な感触。

 これは、もしかしなくても異物混入か?


 慌ててティッシュを取り出し、その上に租借していたものを吐き出す。

 やっぱりあんな怪しい屋台やめておけばよかった、と店主を睨む。


「え、これ……」

 吐き出した小麦の中には、明らかな異物が混じっていた。


 肌色の棒の先に、ピンクの塊。

 これはもしかしなくても……


 人間の、指?


 しばらく呆然と眺めていると、不意に、その指がもぞもぞと動き出した。


「ひいっ!?」

 指は段々と動きを大きくし、ついにはティッシュの上から地面に飛び降り、けんけんでもするようにアスファルトの上を走って行ってしまった。


 屋台では、店主がニヤニヤとした表情を浮かべながらこちらを見ていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る