第86話-お化け屋敷-
お化け屋敷と言うのは、普通真っ暗なものだろう。
その真っ暗闇の中で大きな音が聞こえてきたり、何かが突然襲い掛かって来るから恐ろしいのだ。
同じことを明るい空間でやっても、恐ろしさは半減してしまう。
然るに今後ろからついてきている何者かは、このお化け屋敷の楽しみを台無しにしてしまっている。
なぜお前はそんなにも眩しく輝いているんだ。
明らかに人間ではない。
後ろを振り返ってハッキリ見たわけではないが、人間が立てるであろう足音や衣擦れなどの音、そして気配が一切ない。
ただただ強烈な光が音も無く、一定の距離で後ろからついてくるのだ。
ピッタリと後ろを着いてくる光は、蛍光灯のように辺り一面を明るく照らしてしまう。
お化け屋敷はすっかり、ただの「荷物が多い廊下」になってしまっていた。
しかし隣を歩いている彼女にはこの光が見えていないらしく、「真っ暗で怖い……」などと弱々しく言っている。
ある意味不気味だが、そんな恐怖は求めていない。
俺は純粋にお化け屋敷を楽しみに来たんだ!
この恐怖はお化け屋敷のものではない。
強いて言うなら背中に銃を突きつけられるような恐怖だ。
お化け屋敷では、暗闇とどこから何が飛び出してくるか分からない仕掛けのせいで一歩一歩慎重になるものだが、この光のせいで十歩先まで何があるのか丸見えだ。
だから何も気にせずさっさと先に進むことが出来る。
というか早く出てしまいたい。
もう勘弁してくれ。
なんとか十分ほどの行程を終え、俺達は無事に出口にたどり着いた。
外に出てから辺りを見渡しても、不自然な光などはどこにも無い。
俺はようやくほっとして、近くのベンチにへなへなと尻を下ろした。
力無く隣に座った彼女も、へにゃっとした笑顔で安心したように言った。
「いやー、怖かったね~」
「ほんとに、怖かった」
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