第85話-シャワー-

 ソウマが一人で暮らしているのは、所謂事故物件のアパートの一室だった。

 前の住民は一人暮らしで、風呂で死んでいるのが見つかったらしい。


 ソウマは内見の時にその説明をされたが、そんなことは別に気にならなかったので、家賃が安かったこともありすぐに入居した。


 それから半年、ソウマは幽霊に会うことも体調が悪くなることも無く穏やかに過ごしている。

 たが、一つだけおかしなことがあった。


 ソウマは毎日風呂に入る代わりにシャワーを浴びる。

 しかし毎月17日だけ、シャワーから冷たい水しか出なくなってしまうのだった。


 業者を呼んで調べてもらったが、給湯器に異常はない。

 台所と風呂にはきちんと湯が出る。

 17日以外にシャワーが冷水になることも無い。


 17日のシャワーだけがおかしいのだ。


 おかげで、17日だけは浴槽にお湯を張って風呂に入る習慣がついてしまった。


 入居から1年が経っても、シャワーが直る様子はない。


 大家に相談したソウマは、前の住人が死んでいたのがおそらく17日だったという話を聞いた。

 発見後に警察が調べた結果がどうとか。


 そうか、つまり顔も知らない前の住人の月命日にシャワーがおかしくなっているのかとソウマは悟った。


 しかし、わざわざシャワーを冷たくするのは何故か。

 あれこれと思案を巡らしたソウマは、ある考えに至り、この部屋に来て初めて震えた。


 それ以来、17日には近所の銭湯を利用している。

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