第84話-しおり-

 長時間にわたる読書で、目がすっかり疲れ切っていた。

 ページから目を上げると、目が少ししばしばする。

 しかし、あとちょっとだ。何としてもあと一息で読み切ってやる。

 でなければ、またややこしいことになってしまうから……


 私が普段使っているしおりは、小学校の時の友達にもらったとても大切なものだ。

 少し硬めの紙に綺麗な猫の絵が印刷されていて、上にはひもが通してある。

 十年以上も使い続けて端が折れたり、寄れたりしていたが、大切に使い続けていた。


 だが最近、このしおりが妙な動きをするようになった。

 いや、しおりが動くわけはない。ないのだが。

 しかし実際動いてしまっている。


 別に目の前でフワフワと踊りだすとか、そういう訳では無い。


 ただ、このしおりを読みかけの本に挟んでおくと、勝手に移動してしまうのだ。

 今読んでいるページから、まったく関係の無いページへと。


 そのせいで、本を読み返そうとするたびに混乱してしまう。


 別に誰かが勝手にしおりの場所を変えている訳では無い。と思う。

 この現象は家でも学校でも起こっているし、私の部屋にあっても鞄の中にあっても関係なく移動している。


 だから、この本を読み終わったところでこのしおりは引退ということにして、どこかに大切にしまっておこうと考えた。

 このしおりももうあちこちボロボロになっているので、良い機会だろう。


 なんとか読み終えた本を閉じ、しおりを手に持ったその時。

 突然目の前でしおりがびりびりと破けだし、見る見るうちに上下で真っ二つになってしまった。


 取れてしまったしおりの上半分が、ひらひらと舞いながら着地する。


 明らかに、ありえないことだった。

 目の前で起こった現象を受け入れきれない私は、落ちた紙片をただぼおっと見詰めていた。


 しかし、どうしてこんなことが?

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