第59話-ダイダラボッチ-

 何かがおかしい。

 私がそう思うようになったのは、夜コンビニに出かけたときに、ビルの間を歩く巨人を見たときからだ。


 始めは小さな違和感だったが、それにハッキリ気が付いたのはあの時。

 街で一番大きなタワーマンションが、いつの間にか消えていた時だ。


 どうやら、私はあの巨人を見たから気付くことが出来たらしい。

 この街が少しずつ作り替えられていることに。


 少しずつとはいえ、建物自体は一瞬で消えてしまう。


 タワーマンションも、工事など一切していないのに忽然と姿を消してしまった。

 後にはただ空き地が残るばかり。


 他にもたくさんの家、ビル、店なんかが気付かないうちに消えていた。

 それらは空き地になったり、まったく別の建物になったりしている。

 そんなことが、二週間に一回、多い時には三日で一回くらいの頻度で起こっていた。


 そこに住んでいた人たちや、働いていた人たちがどうなったのかは知らない。

 知るすべもない。


 ただ、気が付けばこの前までそこにあった建物が消えている。

 そしてその前後にはいつも、謎の巨人がビルの間を歩く様子が一瞬だけ見えるのだ。


 街の変化にも、巨人にも、気が付いているのは私一人だけらしい。

 いや、もしかしたら他にもそんな人がいるのかもしれないが、私は会ったことが無い。


 そもそもいたとして、私にはこんな変な現象が見えていますと大々的に言って歩くわけが無いのだ。

 頭がおかしいんだと思われる。

 だから私もそんなことはしない。


 街は今日も誰にも気づかれずに作り替えられ、巨人が闊歩する。

 それらは誰にも気づかれないし、ニュースになることも無い。

 しかし確実に存在している現象なのだ。


 さて、状況の整理のために色々思い出してはみたが、何の役にも立ちそうにない。

 さしあたっては、これからどうするかを考えなければ。


 私の家はどこに消えた?


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