第56話-無言電話-

「あれ?どうした?」

「いや、なんかスマホが固まって……再起動してみるか」

 ツチノコの話を読み上げていた修也が、怪訝な顔をしながらスマホの電源を落とした。


 気が付けば百物語アプリに表示されるロウソクは、残り「四十五」となっている。


 すでに半分以上が終わっていることに改めて驚きながらも、まだ半分残っていることに四人は苦い顔をした。


 ただの遊びなのだからいつでもやめていいはずだが、なんとなく今更やめようとは言いづらい。

 そんな空気だった。


「あー、ちょっと時間かかりだからもう次の話行こうぜ」

「いいのかな?それってルール違反にならない?」

「大丈夫だろ、今までもラストいい感じに切ってるところ多かったし」

 啓介がそう言って笑うと、他の三人もそれ以上は何も言わずに、次の話に移ることになった。


 樹が携帯の画面をつけ、すでに用意してあったらしい文章を淡々と読み上げる。




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 カイトには悩みがあった。


 ここのところ頻繁にかかってくる無言電話。

 これが、昼夜を問わず一日に一回必ずかかってくるのである。


 時間帯は完全にランダム。

 非通知で携帯が鳴り、出た途端に何も言わずに切られるということが、もう何度も続いていた。


 仕事の都合で多方面から電話がかかって来るので、無視することも出来ない。

 更に、カイトが寝ている時や電話に出られない時には絶対にかかってこなかった。


 忙しい時や風呂上がりのホッと一息ついた時に、狙い済ましたようにかかって来るのだ。


 とはいえ無言電話だけなので最初の内は気にしていなかった。

 しかし一ヵ月も続いては、さすがに放っておけない。


 その電話は一日に一回だが、まだかかってきていない時にはいつかかってくるのかとビクビクし、かかってきた後は翌日のことを思ってげんなりする。


 正直、もう限界だった。

 だから、電話をかけてしまったのだ。

 受信履歴から、無言電話の相手へ。


 その電話は、相手に通じた途端に切れてしまった。

 そしてその直後に、見たことの無いアドレスからメールが届いた。

 そこにはただ一言。


『またかけてきてくださいね』と。

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