第53話-ノロイマス-
「悪い、俺ちょっとトイレ」
百物語が着々と進んでいく中、啓介が突然立ち上がった。
もうすっかり深夜になり、時計は午前二時半を指している。
百物語アプリの中に表示されていたロウソクの火はすでに半分以上が消えているが、その一つ一つの火はむしろ強く光を放ち、その光で構成された円はなおもその形をとどめている。
画面に表示された残りのロウソクの数は、「四十八」。
「おいー、自分の番じゃねえかよ」
「ごめんごめん、ジュース飲み過ぎたわ」
灯りの無い夜の部屋は暗く足元もおぼつかない状態だったが、そこは勝手知ったる自室である。
啓介はひょいひょいと軽い足取りで難なくドアにたどり着き、部屋を出ていった。
「えー、じゃあ俺か。もうネタ切れ気味なんだよな」
「あ、なら僕、もう一個ネタ残ってるから、それ言っちゃうよ」
そう言いながら、今しがた話し終えたばかりの樹が進み出た。
「連続になるけどいいのか?」
「いいよいいよ、その代わり啓介を四番目にしよ」
四人で百話を語るなら、四番目の人間が最後の百話目を語ることになる。
樹の提案の意味を察した涼と修也は、面白そうに笑みを浮かべて頷いた。
「じゃあ話すよ。……二人とも、ネットは使うよね?当然いろんなサイトにアクセスするはずだけど、中にはこんなところもあるみたいだよ……」
--------------------
「ノロイマス」ってサイト知ってる?
それなりに有名なサイトだから知ってるかもしれないけどね。
そこにアクセスするとパソコンがバグったり、ブラックアウトした画面に呪いのメッセージや目玉が表示されたり……。
そう、めちゃくちゃ有名なジョークサイトだよ。
アクセスしたときの怪現象も全部演出。
ただ一つ不審なことは、このサイトを運営している会社が、まったく謎の会社なんだよね。
ノロイマスの運営以外で名前を見かけることが無いんだ。
会社の名前で調べても何も出てこないし。
それで一部では、ホンモノなんじゃないかって噂もあったり……。
それを調べて動画にしてた人がいるんだよ。
サイトにアクセスするところから始めて、このサイトの実態を調査する様子を動画にして、シリーズとして投稿してたんだ。
結構人気のシリーズだったんだけど、途中で更新が止まった。
まさか真相を知ってしまって消されたんじゃないかとか、色々言われてたみたいだね。
まあ結局、三か月後に新しい動画が投稿されて、無事だったことがわかったんだけどね。
ただそれもちょっと奇妙でね。
それまでは都市伝説みたいなのを扱ってた人なのに、急に商品紹介やドッキリ企画みたいなのしかやらなくなっちゃったんだよ。
そして、それまでに投稿されてた動画は全部消しちゃった。
突然の方針転換に、洗脳でもされたんじゃないかとか噂が立ったけど、その人の動画を見に来てた人達は都市伝説が好きだった人たちだから、内容変更後の動画は見に来なくなっちゃった。
そしてみんなに忘れられたころ、その投稿者はひっそり引退した。
だからいま彼がどうなってるかは、誰にも分からないんだ。
ちなみに、その投稿者がおかしいってことで調査を始めた別の投稿者もいたんだけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます