8.ゆかり(3)

ガクン!


突然、電車のスピードが落ち、車内の照明が落ちた。


何?


「ただいま、瞬間停電が発生いたしました。照明と空調が停止しておりますが、まもなく復旧いたしますのでご了承ください。」


何それ?チョーついてない!


電車止まんないでしょうね。もう!


おやじのことも気になるけど、この停電何とかなんないの?


薄暗くって気分が悪くなっちゃう。


まったくぅ~


えっ?


何あれ?


光ってる!


おやじ、光ってるよ!


間違いない。


なんで?人間って光ったっけ?


光らない光らない!


あのおやじ、人間じゃないのかな?


宇宙人?地底人?海底人?


暗いところにすんでるものなら自分で光るかもしれないもんね。


一見普通の人間っぽいけど、私たちとは違うんだ。


でも、あの光って他の人には見えてないのかな?


見えてたらもう少し騒ぎになりそうなもんだけど。みんな静かだな。


薄い緑だから気づかないのかな・・・。


おや?


扉のそばでゲームをしている男が驚いた顔をしている。


あの男は気付いてるみたい。


その男も周りを見回している。自分の見たものが信じられないのかな?


と、その男と目が合った。


何か、その男はおやじにとても興味を持っているようだ。


目で、合図を送ってくる。


やっぱり気付いている。


こっちもそれとなく目配せをして気付いていることを伝えてみた。


その男にも注目していると、なにやら考え込んでいるように見える。


もしかしたら・・・・


後を追う気なのかな?


あ~ あたしも気になる!


あの男が後を追うなら、あたしも追ってみようかな?


どうせ、たいした仕事じゃない。あたしが一日くらい居なくたって会社は困らない。


何か理由をつけて休んじゃおっと!


よ~し、決めた。


今日はこのおやじをとことんまで追いかけよう。


そうと決めたらおやじを見のがさないようにしなきゃ!


どこで、降りるのかな・・・・

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