意地の悪い輩だらけだが、勇者は結構いいひとらしい。――1

「三本目の課題は『レインボーサーペントの討伐』ですぞ!」


 翌日の昼前。


 グレゴールさんが、集まった人々の前で説明をはじめた。


「お二方ふたかたには、『レインボーサーペント』の生息地へおもむき、その討伐数を競っていただきます。期間は一週間ですぞ」


 俺は腕組みをして首をひねる。


 レインボーサーペント? 知らないモンスターだな。


 グレゴールさんは、レインボーサーペントの生息地がどこか明かさなかった。つまり、今回の課題では、まずは生息地を調べなくてはならないらしい。


 俺は四人に念話で尋ねる。


『みんな、レインボーサーペントって知ってる?』

『ううん』

『はじめて聞く名前です』

『ピピ、知らない』

『お、お役に立てず、申し訳、ありません』


 参ったな。みんなも知らないなら、お手上げだ。


 俺は「うーん」とうなる。


「加えて、今回の課題では、レインボーサーペントを一体討伐とうばつする毎に、1ポイントを差し上げましょう!」


 悩んでいると、グレゴールさんが唐突にルールを付け足した。


 驚いて見やると、グレゴールさんはニタァ、と、いやらしい笑みを浮かべる。


「今回のみは、神獣全員の参加を許可しましょう。勇者は全力の相手を下してこそですからなあ」


 そして、


「必ずやエリスさまは成し遂げるでしょう! やはり、悪魔は敗れ去る運命なのです!」


 大仰おおぎょうに両腕を広げるグレゴールさん。


「その通りだ!」

「エリスさまが勝たれるに決まっているわ!」


 村人たちが、拳を突き上げる。


 やられた。


 俺は唇を噛む。


 グレゴールさんは、俺たちがレインボーサーペントについて、なにも知らないことを見抜いたんだろう。


 おそらく、エリスさんはレインボーサーペントの生息地を把握している。


 グレゴールさんは、エリスさんの勝利を見越したうえで、『一体討伐する毎に1ポイント』というルールを追加したんだ。


 なにしろ、負け越しているエリスさんにとって、この課題は逆転の大チャンスなのだから。


 そして、神獣全員みんなの参加を許可したのは、俺が負けた際、よりみじめに映るから。


 三本目の課題で、グレゴールさんは決着をつけさせようとしているんだ――エリスさんの逆転勝利というかたちで。


『どうしましょう、シルバさま』


 ミアが不安げにいてくる。


 俺たちにできることは、ひとつだけだった。


『……レインボーサーペントについて調べよう。そうするほかにないよ』

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