四体目の神獣と再会したが、彼女には事情があるらしい。――3
一〇日後の正午前。
王国騎士団の一番隊、シェイラさん、副団長、フリードとともに、俺たちはワンの近くにある
宿駅は街道沿いに建てられており、周りにほかの建物はない。
野原のなかにポツンと建っている様は、どこか寂しげに映った。
「私たちはこの近くに
隊員に指示を出していたシェイラさんが、俺たちのところにきて指針を口にする。
「食物などの必需品は、宿駅を利用する商人や、作物を売りにくるワンの人々から調達できるだろう。私たちは、ここを拠点にしてワンの見回りをし、情報を集めることにするよ」
「フィナルのほうはどうするんですか?」
「そちらは、私たちで調べることはできない」
「は?」
予期せぬ答えに、俺はポカンと口を開けた。
「考えてもみてくれ。ワンはブルート王国に属し、フィナルはエスピーノ王国に属している。友好国同士とは言え、いま、ワンとフィナルは抗争の真っ最中だ。そんなときに、ブルート王国の王国騎士団がフィナルの調査をして、穏便に済むと思うかい?」
「たしかに……武力で鎮圧しにきたのかと、フィナルのひとたちが勘違いするかもしれませんね」
「そうなれば、火に油を注ぐようなものだ。私たちが抗争を激化してしまえば、本末転倒というものだろう?」
「けど、それならどうするんですか? ワンを調査するだけじゃ、抗争の鎮静は不可能だと思うんですが」
「そこで、きみたちの出番だよ」
眉根を寄せる俺に、シェイラさんがニッと口角を上げ、歯を見せる。
「冒険者であるシルバくんに、国の
冒険者ギルドは、どの国にも属していない独立組織だ。
そのため、冒険者の活動は特定の国に収まらない。様々な国を渡り歩く冒険者も、珍しくないほどだ。
「つまり、俺たちがフィナルで調査をするってことですか?」
「そういうことだ。シルバくんに協力を要請したのは、そのためでもあるんだよ」
我が意を得たりと言いたげに、シェイラさんがウインクする。
「きみたちには、冒険者ギルドがある、エスピーノ王国の都市『ポッサ』に向かい、クエストをこなしつつ、フィナルの調査をしてほしい。
「了解です」
指示を出すシェイラさんに、俺は
「頼んだよ、シルバくん。私たちとは別行動になるが……まあ、きみたちにとっては好都合かもしれないね」
「好都合とは?」
言葉の意味がつかめずに首をかしげると、シェイラさんはイタズラ好きの子どもが見せるような笑みを浮かべる。
「決まっているだろう? 私たちと一緒だと、彼女たちとイチャつけないじゃないか」
「はいっ!?」
三人に視線をやりながら、思いも寄らない返答をするシェイラさんに、俺は目を丸くした。
「クゥくん、ミアくん、ピピくん。任務を果たしさえすれば、どれだけシルバくんに甘えても構わないからね」
「本当、シェイラ!?」
「ああ。デートに来たんだと気楽に考えたまえ」
「デート……いい響きですね」
「シルバくんとの仲をさらに深めるチャンスだ。積極的にアプローチするといい」
「ん。いっぱい、パパと、イチャイチャする」
俺が呆然としているあいだに、シェイラさんは三人にアドバイスを送る。
「特に狙い目は夜だよ? 宿では人目を
「うん!」
「はい!」
「ん!」
明らかに
「な、なに言ってるんですか、シェイラさん!」
ようやく我に返った俺は、「ちょっとこっちに来てください!」と、シェイラさんの腕を引いて三人から離れる。
(なかなか強引だね、シルバくん。強引なのは嫌いじゃないよ)
(シィエラさん、わざと俺を
俺がこめかみをピクピクさせると、シェイラさんはクスクスと笑みを漏らした。
(みんなに変なこと吹き込むの、いい加減やめてくださいよ!)
(いや、きみたちはからかい
(当事者にとっては冗談じゃ済まないんですからね!? 先日もクゥに入れ知恵したじゃないですか! あのとき、ホント、大変だったんですからね!)
(おや? クゥくんのマッサージは気に
シェイラさんに
クゥの魅惑的な裸体、背中に押しつけられる大玉果実の感触、快楽に
俺の顔がカアッと熱くなった。
(ふふっ、まんざらでもないようだね)
ニヤニヤと笑うシェイラさんに反論できず、俺は「ぐぎぎぎぎ……」と歯噛みした。
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