第97話 グレイの魔力量 その2
「ねぇ、ケリー」
マリアがケリーに声をかけると何?という表情でマリアを見るケリー。
「ここにいるケリーやリズ、グレイは常人以上の魔力量の持ち主だってことは私もわかってるんだけど、普通の冒険者の魔法使いの人の魔力量ってだいたいどれくらいなの?」
こう言う質問に対する答え方は魔法学院で教師をしているケリーの得意分野でジュースを飲むと、
「もちろん個人差はあるわよ。だから一般論の話しになるけど私やグレイが撃ってる精霊魔法で言うと普通の精霊士、賢者だと1度の戦闘で6回以上撃てれば魔力量が多いって言われるレベルね」
「たったそれだけ?」
「そう。普通はせいぜい4、5回。それも連続して撃てない人が多いの。インターバルを作って1回の戦闘でせいぜいその位ね」
「ということはリンクとかして戦闘時間が長引くと大変なことになるじゃない」
「そうよ。だから基本リンクしない様に個別撃破が基本の戦闘スタイル。万が一リンクしたらそれだけ前衛や狩人の負荷が増えるわ。あとボス戦もね。基本ボス戦って戦闘時間が長くなるでしょ?精霊士や賢者は2、3回撃つと戦闘中でもしばらく休憩するか、薬でMPを補充するの。僧侶も同じよ。大きな回復魔法を連打するとすぐに魔力がなくなっちゃう。だからたいていの僧侶は小さな回復魔法を何度も使うの。小さな回復魔法を使うのはタゲを取らないっていう意図もあるけどね、でもそれだけじゃなくてやっぱり大きな回復魔法は魔力をたくさん消費するのよ」
ケリーの説明にリズも頷いている。
マリアは話を聞いていてびっくりしていた。元勇者パーティのメンバーとしか冒険者と行動したことがないので、ケリーやリズ、グレイが当たり前の様に魔法を連続で撃っている所しか見ていなくて、そしてそれだけ撃っても全然疲れてない彼らを見て後衛というのはそう言うものだと思っていた。すなわちここにいるグレイ、ケリー、リズの3人はとんでもない魔力量を持っていたんだと。
「じゃあケリーもリズもグレイも相当魔力量が多いってことよね」
ケリーは頷き、
「3人の中でグレイが一番魔力量が多いわ、これは間違いない。彼が魔力を使いすぎて疲れたっていう所を見たことがないもの」
「そうなんだ」
「でもね、マリア。グレイは元からここまで魔力量が多かったわけじゃないのよ。前にも言ったけど彼は勇者パーティに入ってからは毎日、本当に毎日自分で魔力を増やせる鍛錬を欠かさずしてきてるの。リズと私もグレイの鍛錬を見て毎日やりだしてから魔力量が増えたのよ。なので素質プラス鍛錬の賜物だと言えるわね」
ケリーの説明に感心しているマリア。
ケリーの説明が終わるとグレイが、
「そう言うわけでさ、ちょっとどうなるのか試してみたいんだ、いいかな?」
「じゃあ今週末に行ってみよう」
エニスの言葉で週末にグレイの魔力量を検証することになった。
その週末、5人は立ち入り禁止のダンジョンの入り口に立っていた。
「12層に飛ぼう、そこで軽く身体を動かしてから13層のモンスターハウスに挑戦する」
グレイの言葉に頷く4人。そうしてカードをかざして全員12層に飛んだ。
準備運動の感覚で身体を動かし、魔法を撃って進んでいき、何のトラブルもなく13層に降りる階段を見つけて下に降りていく。
「相変わらずうじゃうじゃといるわね」
階段からモンスターハウスを見てケリーが言う。前回と同じ様にそれほど大きくない部屋にランクAの魔獣がひしめき合っている。
「ざっと数えて60体ちょっといるね」
エニスの言葉に頷くグレイ、
「リズの強化魔法もらったらグラビティを掛けるから、そのあとは4人でよろしく頼む」
「本当に無理しないでよ」
心配そうに言うリズの肩を叩いて大丈夫という表情をするグレイ。
リズが範囲化した強化魔法を全員にかけているときからグレイはモンスターハウスの魔獣全てをターゲットとして捉えていて、魔法をかけ終わったタイミングでグレイのグラビティが60体以上の魔獣にむかって放たれた。
魔法を関知して一斉に振り向く魔獣の動きが圧倒的に遅い。すぐにエニスとマリアがフロアに駆け出して手前から片っ端から剣で倒していく。
「グレイ、大丈夫?」
リズが心配そうにいい、ケリーもグレイを見ている。
「持っていかれたけど、半分も持っていかれてないぜ。もう一丁!」
そう言うとびっくりした顔をしているリズとケリーを横目にもう一度グラビティを唱えるグレイ。エニスとマリアが10体程倒していたとはいえ、50体ほどの魔獣に再度魔法を撃った。
「グレイ!」
リズが叫ぶが、
「大丈夫だ。まだ魔力がある」
「本当に化け物ね」
そう言うとケリーが精霊を範囲化させてランクAを倒していく、エニスとマリアも緩慢な動きをしている魔獣達をまるで訓練の人形を相手にする様に剣を左右に振って次から次へと倒していき、グレイも精霊を打ち出した。
「どんだけ魔力持ってるのよ」
精霊を打ち始めたグレイを見て、隣で範囲化した精霊を打ちまくってるケリーが呆れた声で言う。
そうして結局5分もかからない前回よりずっと短時間でモンスターハウスの掃除が終わった。涼しい顔をして立っているグレイの周りに皆集まってきて、エニスが、
「魔力欠乏症じゃないな。どんな感じだった?」
「感覚的に言うと、60体のランクAの魔獣にグラビティを撃って俺の魔力量の約3分の1程度を持ってかれた感じ。2回目のグラビティのときは数が減ってたからそれ以下かな。その後で精霊を撃ったけどそれでもまた3分の1くらいは残ってる感じだよ」
その言葉を聞いて他の4人は言葉出さずにグレイを見ている。
「ん?どうしたんだ?」
自分を見て何も言わないメンバーに困惑するグレイ。
「どうしたじゃないでしょ?ランクA60体に範囲魔法撃ってたった3分の1持っていかれただけですって?本当に底無しの魔力量じゃないの。呆れてるのよ、呆れてるの!」
「事実を述べただけでケリーにそこまで言われるのかよ」
「魔力量が多いってのは皆知ってたけどここまでとはね。びっくりだ」
エニスが感心して言うと、
「これだけの魔力量があれば空を飛んだり転移したり消えたり、そりゃ好きにできるわよね」
マリアがエニスに続けて言う。その言葉にグレイが頷くと皆を見て、
「これで大体わかったよ。俺が使える範囲魔法はグラビティだけだけど、ランクAなら200体位までは行けるってことだ。ランクSになるとそうだな100体位かな、ひょっとしたら100体切るかも。俺って結構魔力有ったんだ」
グレイの言葉にケリーが一言。
「結構っていうレベルじゃないわよ。化け物レベルよ」
その後一旦地上に出て少し休んだ一行。そうしてせっかくダンジョンに来たんだからともう一度ボス部屋に飛んでケルベロスを普通に倒して再び地上に戻ってきた5人。
「もうケルベロスも飽きたわ」
ケリーが笑いながら言う。もちろん冗談だがそれ程までにボス戦の難易度が下がっていた。
「私、今回のボス戦、最初の強化魔法しか仕事してない」
リズも笑いながらケリーの後に言葉を続ける。
エニスはダンジョンの入り口で談笑しているメンバーを見ていた。彼らは魔王討伐後より数段成長している。グレイのスキルアップが刺激になってリズ、ケリー、そして今ここにはいないがクレインまでもが鍛錬を続けてさらなる高みに登っていった。
このメンバーと魔王討伐ができて本当によかったと再認識したエニス。グレイとリズとケリーが笑いながら話をしているのを見ながら隣に立っているマリアの肩に手を回すと、
「本当に彼らは凄いよ」
「そうね。でも貴方も成長してるってグレイが言ってたじゃない」
「そうだね。それもグレイのおかげだ」
その言葉を聞いて顔を上げてエニスを見るマリア。
「私も彼らと知り合えてよかった」
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