第88話 大陸制覇?
「予想してたとは言え、あっさり倒せたな」
止めを刺したエニスが言うと、剣を鞘に戻し、取り出した水を飲んでいたマリアも
「見た時は一瞬焦ったけど、戦闘が始まると本当に楽だったわ。好きに剣を振り回せたし」
グレイは消えたミノタウロスの場所に現れた宝箱を開けて中身をアイテムボックスに入れると
「皆の威力が上がるとここまで違うんだな」
「本当ね。びっくり」
リズもグレイに続けて言う。
「じゃあ皆さん、このまま大陸制覇に行きましょう!」
ケリーの言葉に笑いが起き、そして一行は地上に戻ってエイラートのグレイの家の庭に移動魔法で飛んでいった。
まだ夕刻前のエイラート。グレイの家についたメンバーはリビングのソファや椅子に思い思いに座ってリラックスしながら今日のダンジョンの話しをしていた。
グレイだけはギルドに報告とアイテムの買取依頼に行っているのでいないが、他のメンバーはリズが用意したジュースを飲みながら、
「クレインの挑発スキルが本当に優秀だよ。前衛にしてみたらタゲを気にしなくてもいいってのは助かるね」
「そうそう。魔獣のタゲを気にせずに思い切り剣が振れたもの」
エニスとマリア。
「挑発スキルは確かに優秀だけどさグレイのグラビティ、ありゃ反則だぜ。あのミノタウロスの攻撃がほとんどノーダメージだった」
「実際に戦闘すると、数字以上にあのグラビティの魔法の威力の凄さがわかるわね」
クレインの後にケリーが続けて言い、
「文献に載っていたスタンピード(魔獣の暴走)。あれもあの時代にグラビティがあれば怖くなかったのかもしれないわ」
そうだなと相槌を打つメンバー。
その頃グレイは1人でギルドを訪問し、ダンジョンの戦利品の鑑定と買取を依頼している間ギルマスのリチャードとギルマスの執務室のソファに座って話をしていた。
「なるほど全20層のダンジョン、ダンジョンのボスはミノタウロス。それでお前らはそのダンジョンをボス討伐も含めて2日でさっくりクリアしてきたと…相変わらずの化物集団だな」
グレイの報告を聞いたギルマスが呆れた口調で言う。
「正直スキルアップ前なら厳しかったダンジョンも今はそうでもなくなってる」
「お前らの力はもう別格だ。それで、ギルドとしてどうしたらいいと思う?」
ギルマスのその質問の答えを用意していたグレイは、
「今回のダンジョンは一般に開放して問題ないだろう。17層以降に潜れるパーティはそう多くはないだろうけど特に他のダンジョンと大きな差はないよ。いやらしいフロアも無かったし」
「わかった。じゃあそうことならあのダンジョンを一般に開放しよう」
大きく頷いたギルマス。そこで一旦言葉を切ると、
「お前さん達はこれからどうするんだ?全員がスキルアップしたみたいだが?」
「まだみんなとは話ししてないが、スキルアップはしたけれども引き続きダンジョン攻略は続けると思う。でないと腕が鈍っちまうしな。引退するにはまだ早い」
「なるほど。そう言うことなら傭兵稼業も引き続きお願いできるって訳だ」
「そうなるな。引き続きよろしく」
そうしてギルドからアイテムの買取の金貨を貰うとギルマスに礼を言ってグレイはギルドを後にして自宅に戻ってきた。
「おかえりなさい」
リズの出迎えを受けてリビングに入ると皆リラックスして座っていて、入ってきたグレイを見てどうだった?という目をする。
「ギルドにはあのダンジョンは一般開放して問題ないと報告しておいたよ」
「まぁ、問題ないわね」
ケリーの言葉にグレイが頷くとダンジョンで得た金貨を人数分に分配する。
「結構いい金額だな」
受け取った金貨を見てクレインが言う。
「ミノタウロスの斧が出ただろう?あれは素材がいいらしくて高く買い取ってくれた。それ以外に皮とかもそこそこの値段だったよ」
「なるほど。まぁ高く売れたのならよかったよ」
そう言ってクレインはアイテムボックスに金貨を仕舞った。
グレイも合流して6人でリビングで雑談をするメンバー。
「皆スキルアップしちゃったみたいだけど、今度はどうするつもり?」
こう言う時は大抵ケリーが皆が気になっている話の口火を切る。グレイはケリーを見てそれから他のメンバーに視線を向けて、
「ギルマスにも同じことを聞かれたよ。俺個人としてはスキルアップはしたけれどもこれからもダンジョンは攻略すると言った。腕が鈍るのはいやだし」
「俺もそれでいいかな。スキルアップする目的だけの為にダンジョンに潜ってた訳じゃないし。こうして皆でわいわいやるのは楽しいからね」
エニスが自分の意見を言うと大きく頷く他のメンバー。
「マリアも問題ないかい?」
「もちろんよ。元勇者パーティと一緒に冒険できるなんて楽しすぎる」
「じゃあ決まりだな。これからもよろしく」
その後リズが作った夕食を今日はBARではなく自宅で食べると、グレイはクレインをルサイルの王都に飛ばした。
別れ際にクレインがグレイに握手を求め、
「グレイ。お前が頑張ってたから俺もここまで来られた。礼を言うよ」
握手をしてきたクレインの手を強く握り返しながら、
「クレインが1人でも諦めずにずっと頑張ってきたからさ。これからもよろしく頼むぜ」
そう言って別れるとエイラートに戻っていった。
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