第77話 リズ 2度目のスキルアップ
それから数週間後、グレイとリズがいつもの森でランクAを相手にスキル上げをしていると、魔獣を倒したところでリズの脳内にスキルアップのアナウンスが…
『僧侶のスキルがあがりました』
回復、強化、治癒魔法が範囲化できる様になる。
範囲化した場合その魔力量は単体の1.5倍である。
またそれぞれの魔法の効果と効果時間がアップ
「グレイ!」
リズはグレイに駆け寄るといきなり抱きついて顔を上げてグレイを見て、
「今スキルアップが来たの」
「本当か!?」
「うん」
そうして脳内に浮かんだアナウンスを声に出して説明する。黙って聞いていたグレイ。
「回復、強化、治癒の範囲化か。しかも効果アップ。凄いじゃないか、リズ」
リズをグッと抱きしめてその背中をなぞるグレイ。
「思ったより早かった」
「ジョブごとに上限が違うんだろうな。でもこれでようやくリズも僧侶の最高峰に到達だ」
我が事の様に喜ぶグレイ。
「グレイがね、グレイがずっと諦めないて鍛錬してたから。私ももっと頑張らないとって思ってやってきてよかった」
グレイに抱きついて涙声で泣きじゃくりながら話すリズ。その背中を撫でながら、
「うんうん、リズはいつも一生懸命だった。それが報われたんだよ。よかったよかった」
そうして森の中でしばらく抱き合っていた2人。
それから実際にリズの強化魔法を受けたグレイはその強度に驚嘆する。
「凄いな。以前より2,3割程強くなってる感じだ。素早さも同じ様に上がってる」
「本当ね。自分でもわかる」
リズが張った強化魔法は今までよりもずっと強力であるのをグレイもそして当人のリズも確認していた。すばやさが上がり同時に対物理攻撃、そして魔法防御が上がるのはパーティとって大きなアドバンテージとなる。
新しいスキルを確かめたグレイはもう一度リズを抱きしめ、
「よかったな。リズ」
リズはグレイの胸の中で何度も頷いていた。
エイラートに戻った2人はそのままギルドに顔を出してギルマスのリチャードにリズの第二段階のスキルアップの報告をした。
「回復、治癒、強化魔法の範囲化だと?こりゃまた凄いのがきたな」
ギルマスの執務室で向かい合って座り、リズの説明を聞いて思わず唸るギルマス。
「俺とリズは最初のスキルアップの時にまだ『???』があったんだ。リズは今回それが来たんだと思う」
その言葉にギルマスはなるほどと頷いてそしてグレイに顔を向けると、
「お前さんはまだなのか?」
「まだだ。ジョブによって上限設定が異なっているみたいだな。まぁこればっかりはいつ来るかわからないからな。引き続きのんびりスキル上げするよ」
「またとんでもないのが来そうじゃないかよ、グレイ」
「どうだかな」
ギルマスに報告を終え、ギルドを出た2人はそのままケリーの家に向かう。ちょうど家にいたケリーにリズが自分の第二段階のスキルアップの話をすると、
「そういやリズとグレイにはまだ『???』があるって言ってたわね。リズの方が先に上がっちゃったのか。それにしても範囲化なんて凄いじゃない。それに加えて強化魔法もまた強力になったんならもう無敵よね」
リズの話を聞いていたケリーは驚きを隠さない表情で言う。
「これでダンジョン攻略がまたかなり楽になりそうだよな」
グレイの言葉に大きく頷くケリー。
「それで、冒険者ギルドは当然発表するんでしょ?」
「だからその前にケリーに報告に来たのよ」
そうしてケリーに報告をして自宅に戻った2人はその夜にはオーブを使ってエニスとマリアにもリズの第二段階のスキルアップの報告をすると、
「今度はリズがグレイより先にスキルアップしたのか。でも今回のも優秀だね。これでまたダンジョン攻略がグッと楽になるね」
リズのスキルアップを素直に悦ぶエニス。妻のマリアもリズのスキルアップを喜びそしてグレイには、
「グレイのはまだ分からないのよね」
「ああ。全然分からない。俺はまぁ今まで通りのんびりとスキル上げしながらいつか来るのを待っているよ」
グレイとリズがケリーとエニス夫妻に報告した数日後、ギルドから僧侶の第二段階のスキルアップの報告がなされた。同時に僧侶と賢者については第二段階目のスキルアップがあり、賢者はまだ第二段階目が開放されておらずその詳細は不明であるとの発表も行われた。
冒険者達は僧侶の回復、治癒、強化魔法の範囲化とその効果時間の延長に大いに驚き、そして同時にまだ未開放の賢者の第二段階のスキルが何かということで皆思い思いに詮索し始めた。
第二段階目を控えているグレイの酒場は連日満員となり、客としてくる冒険者達は皆グレイに一体どんな魔法が来るのか聞きたがったが、当人のグレイも全く予測がつかない訳で。
「店に来てくれるのは有り難いけどさ。次が何かって俺にわかるわけないだろう?」
「でも何か感じるものとかあるんじゃないですか?」
「んなもん、あるわけ無いだろう」
「リズさんは何か感じるものはあったんですか?」
「ううん、何もなかったわよ」
こんなやりとりが日々グレイの酒場で繰り返されていた。
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