第63話 王都ギルド その3

 いきなりギルマスの口からランクSという言葉が出てきてオズボーンはもちろん、酒場中が騒然となる。


「ランクS」


 オズボーンが思わず言うと、フレッドは、


「なんだ知らなかったのかよ、この3人は元勇者パーティのグレイとリズとケリーだ。それぞれ大賢者、聖僧侶、超精霊士になった大陸一の連中だ」


 ギルド内にいる全員の視線が1つのテーブルに注がれる。


「大賢者、グレイ」


 呟くオズボーンに、


「そうだ。魔王を倒して田舎に引っこんじまったと思ったらそこでも鍛錬して新しい賢者の魔法を身につけた化け物だよ」


「化け物は言い過ぎだろう?」


 ギルマスの言葉に反論するグレイ。


「いやいや、お前は間違いなく化け物だ。いやお前だけじゃないな、リズとケリーも化け物だな。お前ら3人その気になったらいつでもこの大陸制覇ができるだろ?」


「そんなことやるわけないでしょ?」


「そうそう。もうエイラートの田舎でのんびりしてますから。おとなしいもんですよ」


 ケリーとリズがギルマスの言葉に心外だと言う風に言うがその表情は笑っている。ギルマスが以前と全く変わっていなくて安心した3人。


 ギルマスのフレッドは空いている椅子を持ってテーブルに座ると、周囲を見て、


「お前達、こいつらの前だとお前らはまだまだひよっこだ。こいつらは魔王を倒した後も日々鍛錬を欠かさずに自分を鍛えてきて、そうしてさらなる高みにたどり着いている。ちょっとランクが上がったからって偉そうにしているとこいつらにとっちめてもらうからな」


 ギルマスの言葉に俯いたり、頷いたりしてる冒険者達。


「全然変わってないなフレッド。安心したよ」


「俺もいい加減落ち着きたいんだけどよ、若い連中はちょっとランクが上がると勘違いする奴ばかりでな。普段はこのオズボーンやあそこにいるこいつの仲間に頼んでるんだけどな。


 こいつらは一応王都でNO.1のパーティだ。若手の育成にも携わってもらってる。

とは言え、たまには俺が出張って勘違いしている若手のネジを締めないとな」


 王都のギルマスのフレッドは以前から面倒見がよくもちろんギルドマスターとしての力量も相当高いのでアル・アインの王都のギルドマスターをしながら実質的にはアル・アイン王国の冒険者ギルドの頂点にいる男だ。


 グレイ達もそのことをよく知っているので


「この国の冒険者ギルドがあんたで持っているってのは俺たちはよく知ってる。大変だけど能力のある人はそれなりの責任を持たないといけないんだよ」


「全く相変わらず好き勝手言ってくれるぜ」


 そう言ってからまだテーブルの隣に立っているオズボーンを見て、


「お前の目から見てこいつらはどうだい?」


 聞かれたグレイは即答で


「彼らのパーティが実力があるってのは俺もリズもケリーも一目見たらわかる。あんたも安心じゃないの」


 自分のギルド所属の冒険者が褒められてギルマスの表情が緩み、


「まぁな。こいつらはもう大丈夫だ。問題はこいつらに続くのがなかなか出てこないってことだ」


「その辺は時間かけないと無理なんじゃない?」


 横からケリーがギルマスに話しかける。


「そうそう、焦っちゃだめだよ」


 リズ。


「まぁな。頭ではわかっちゃいるんだけどな。ところでお前さん達、あっちの仕事は終わったんだろう?」


 ギルマスの言葉に頷く3人。


「すぐにエイラートに帰るのか?」


「特に何もないしな。逆に何かあるのかい?」


 グレイがギルマスに逆に問いかけると、


「いや、何かあるか?って聞かれるとないんだがせっかくランクSが来てるんで、お前さん達の実力をここの連中に見せてやってくれないかと思ってな」


 ギルマスのフレッドの言葉にグレイがリズとケリーを見ると、ケリーが、


「私はいいわよ。急いで帰る必要もないし」


 そう言うとリズも


「そうね。グレイがいいって言うなら私もいいわよ」


「そう言うことだ」


 グレイの言葉にそばでずっと立っていたオズボーンが頭を下げ、


「是非お願いしたい」


 そう言うことで3人は王都ギルドの冒険者の前で実力を披露することになった。


 

ギルマスのフレッドを先頭に一行はギルドの奥にある鍛錬場に向かう。


「で、どういう風にやろうか?」


 ギルマスのフレッドの問いかけにグレイは、


「オズボーンのパーティを借りたい」


 とだけ言う。ギルマスはその言葉に何も言わず


「オズボーン、お前達はOKだろ?」


「もちろん、ランクSの方の実力を目の前で見られるのなら何も問題ありませんよ」


 そうして鍛錬場に入ると、グランドにグレイら3人とオズボーン達ランクAのパーティ4人、そしてギルマスのフレッドが入った。鍛錬場の周辺は話を聞きつけた王都所属の冒険者達が続々と集まってきている。


 グレイはギルド職員に3体の訓練用のミスリルの人形を用意させると、オズボーンのパーティに、


「とりあえずいつもの通りあれが敵だと思って攻撃してくれるか?」


 とだけ言う。


 模擬戦でもするのかと思っていたオズボーンのパーティだがグレイに言われるとわかったとだけ返事をし、僧侶が3人に強化魔法をかけるとそれぞれ3体の人形に攻撃をしていった。戦士とナイトは剣で殴りつけ、精霊士は魔法を人形にぶつける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る