第62話 王都ギルド その2

 3階建ての立派な建物は勇者パーティ時代に何度も訪れた3人にとっては馴染みの建物で、ごく自然に両開きの扉を開けてギルドの中に入っていく。


「変わってないね」


 リズ。


「本当だな。以前と一緒だ」


「私も久しぶりよ。ここの魔法学院勤務の時は全然来なかったし」


 受付の列の最後尾に並んで待ちながら周囲を見る3人。

正面に受付のカウンター、その右の壁にはクエスト掲示板。そして左は酒場というどこのギルドも基本同じつくりだが王都ギルドだけあって、それが大きくて広い。


 酒場で打ち合わせをしていたランクAのパーティの男二人が今しがたギルドに入ってきたグレイとリズとケリーに視線を送る。それに気づいた同じテーブルに座っている女性2人も入り口に視線を送る。


「見ない顔だが、雰囲気がある奴らだな」


「ああ。相当のやり手だろう」


「あの3人、間違いなくランクAクラスよ。相当修羅場を潜ってきてるわね」


「エリーが言うとおり。私もそう思う。敵には絶対にしたくないタイプ」


 テーブルに座っている男2人、女2人のパーティ。

彼らは全員王都ギルドのランクAで、自他共に認めるこのギルドでのトッププレイヤーのパーティだ。


この王都ランクAパーティは

 戦士 オズボーン

 ナイト ネルソン

 精霊士 リーファ

 僧侶     エリー  


という構成でちょうど酒場で打ち合わせをしている時にグレイ、リズ、ケリーの3人がギルドに入ってきた。


 彼らの周囲にいる冒険者達はランクAの連中の話しを聞いて、そしてカウンターに並んでいる高そうなローブを着ている男女の3人組に視線を送る。


「オズボーンさん達が言うなら相当だろう」


「ああ。俺たちに見えないモノが見えてるってことだよな」


 周囲の冒険者達はテーブルの4人組みを見て、それからカウンターに並んでいる3人を見る。


 少しずつ列が進んでようやくグレイら3人がカウンターの前に着くとグレイが代表して受付嬢にギルドカードを差し出し、


「エイラートから来たグレイとリズ、ケリーだ。突然で申し訳ないがここのギルマスのフレッドさんに会いたいんだが取り次いでもらえるかな?」


 受付嬢はカウンターに立ってる3人を見て、それからギルドカードに視線を落とすとすぐに立ち上がり、


「しばらくお待ちください」


 と奥にすっ飛んでいった。この対応も毎度のことなので3人は気にせずに待っていると、すぐに受付嬢が戻ってきて


「大変申し訳ありませんが、ギルドマスターはただいま打ち合わせ中ですので、そこの酒場でお待ち願えませんでしょうか?」


 グレイは二人に視線を向けると頷かれたので


「突然来て無理を言ってるのはこちらだ。じゃあ待たせてもらうよ」


「は、はい。終わり次第すぐにお声をかけますので」


 緊張した口調の受付嬢に軽く手をあげると、3人は酒場に移動して空いているテーブルに腰掛けて果実汁を頼む。


 周囲の視線には慣れているので全く気にせずに3人で差し障りのない話をしていると、一人の男がグレイのテーブルに近づいてきた。

その男から全く殺気を感じなかったグレイは顔を上げて近づいてくる男を見る。


「あんた達見ない顔だが、王都に所属してる冒険者じゃないよな?」


(こいつは戦士だな。なかなかいい武器を持っているし防具もそれなりだ。ランクはAクラスだな)


 近づいてきた男を一瞥してそんな判断をすると、


「そうだ。辺境のエイラートからやってきた田舎者だよ」


「エイラートからかい。そりゃご苦労だったな」


 リズとケリーは黙ってグレイと男のやりとりを聞いているがそこには全く緊張感がない。


「あなた達はここ王都所属の冒険者なの?」


 ケリーが男の顔を見ながら質問すると、


「ああ。王都をベースに活動している。あそこの3人がパーティの仲間だ。俺はオズボーン。戦士をしている」


 オズボーンが顔を向けた方を見るグレイとリズとケリー。


「実力のあるパーティみたいね」


 テーブルの3人を見て、それから目の前の男に視線を戻したケリーが言うとリズもテーブルに顔を向けて、


「本当ね。みなさん強そう」


 やはりこいつら只者じゃないな。俺たちを見ても全然緊張してない。美人の僧侶と可愛い顔をしている精霊士、そしてこの男はジョブがわからん。精霊士っぽく見えるが…いずれにしてもこの3人、一瞥しただけで相手の実力を見抜く目を持ってるってことか。


 オズボーンは自分の目が正しかったことを確認し、ところであんた達の名前を聞いてもいいかい?と言おうとしたところ、カウンターの方から、


「グレイ、リズ、ケリー、久しぶりじゃないかよ。

全く何の連絡もよこさずに。元気にしてたのか?」


 大きな声と共にカウンターから一人の大男がやってきた。


「やぁ、フレッド、久しぶり」


 グレイがそう言うと、ケリーとリズも


「お久しぶり」


「ご無沙汰してます」


 そのままテーブルまで近づいてきたギルマスのフレッド。

そこでテーブルのそばに立っている自分のギルド所属のランクAのオズボーンを見て、


「オズボーン、どうしたんだ? このランクSのグレイとリズとケリーに用事でもあったのか?」

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