第61話 王都ギルド その1

 その1ヶ月後、3国のトップ会談は何事もなく無事に2日の日程を終えて終了した。


 5日前から現地に乗り込んでいたリズとケリーは警備する神兵の素性を調べたが

特に問題のある神兵はいなかった。


 グレイとエニス、クレインもメディナ教皇国に飛んでからは打ち合わせ通りに警備を行い、会談開始から終了まで睡眠を取らずに警備を行った。


 教皇国側も警備に関して元勇者パーティに全面的に協力したこともあり無事に全ての日程を終えて、帰国前に3国のトップが集まっている部屋にエニスをはじめとする勇者パーティ5名が呼ばれその席上でトップから直々にお礼を言われ、少なくない

報酬を後日各自が受け取ることになった。


 その席上で、アル・アインのナザレ国王が今回の様な会談を今後定期的にしようと提案。これにルサイル国王とメディナの教王も賛同。


 会議が終わった宣言の中で折り込むことになった。


「勇者パーティのメンバーには負担をかけるが引き続き我らに協力してもらえると

ありがたい」


 ルサイル国王の言葉に言い返すこともできず、なし崩し的に今後も勇者パーティが移動と警備の一端を担うこととなった。


「グレイ、お主が一番大変だったのは我ら3人もよく理解しておる。理解しておる上でお主に頼むのが最も安全で民の税を余計な経費として使う必要がなくなるのじゃ。引き続き期待しておるぞ」


「ありがたきお言葉」


 グレイもナザレ国王にここまで言われると断ることもできず、ただ頭を下げて頷くだけであった。


 そうしてルサイル国王とアル・アインの国王を無事に送り届けて彼らの仕事が終わった。クレインはルサイル国王と城の中に消えていった。


 そして最後にアル・アインの国王を城に届け、待っていたサイモンに国王陛下の護衛を頼むと、エニス、グレイ、ケリーそしてリズの4人はその足でフランクリン家の館に戻り、用意された立派な応接間に入る。


「ふぅ〜 疲れた。何事もなく終わってよかったよかった」


 ソファに座ってその場で両手を伸ばして大きな伸びをするグレイ。エニスも同じ様に伸びをして


「全くだ。何もなくて一安心」


「それにしても今後定期的にやるって言ってたよな、正直勘弁してもらいたいよ」


「でもそれなりの報酬が貰えそうだし」


 ケリーが言うと、リズも、


「護衛クエストだと割り切ってやるしかないわね。以前もやってたし」


「ずっとお世話になってきた3人だからなぁ。頼まれると断れないよな」


 そんな話をしていると部屋の扉が開いてマリアが入ってきた。そしてその後ろにはワゴンを持った館の給仕が数名。


「皆さんお疲れ様でした。護衛中はほとんど食事を取っておられなかったんでしょ?軽いサンドイッチとジュースをお持ちしましたので食べてください」


「こりゃありがたい」


 エニスが一番にソファから立ち上がってワゴンの上にあるサンドイッチを口にすると、それに続いてケリー、グレイ、リズもそれぞれサンドイッチを食べ、ジュースを口に運ぶ。


「美味しい」


「ああ。本当に旨い。ありがとな、マリア」


 グレイが礼を言うと、


「やっぱりほとんど食べてなかったのね。事前の打ち合わせで食事をとらないって言ってたから用意しておいたのだけど正解だったわ」


 館で出された軽食を食べてようやく一息ついた一行。


「エニスとマリアはやっぱり雪解けごろにエイラートに戻ってくる予定なの?」


 リズが聞くと、


「そうなるな。雪があると馬車は動かせないし。ところでグレイらはこのままエイラートに戻るのかい?」


 グレイは聞いてきたエニスを見て、


「そうだけど、その前にここのギルドに顔を出して久しぶりにギルマスのフレッドの顔を見てから帰ることにするよ」


「ああ。なるほど。彼も3人には会いたがっていたから是非頼むよ」


「ここのギルマスに会うのも久しぶりだしね。ちゃんと挨拶しておかないと後でうるさいし」


 笑いながらケリーが言うと、エニスが頷いて


「実は会議の打ち合わせで王都に来てるのはフレッドは知ってるんだよ。

だから終わって挨拶無しに帰るとまたあのいかつい顔が更にいかつくなって周囲の冒険者にとばっちりがいくだろうから、よろしく頼むよ」


「王都のギルマスなら当然会議のことは知ってるだろうし俺たちが来てるのも知ってるしな。素通りはしないさ。そういうことでこれからギルドに顔を出してエイラートに戻るよ。エニスとマリアがエイラートに戻ってきたらまたダンジョンに行こうぜ」


「そうそう。まだ未クリアのダンジョンもあるって話だし、行かなきゃね」


 ケリーが言えば、リズも


「マリアとエニス、待ってるからね」



 3人は玄関まで見送りに来てくれたエニスとマリアに手を振って館を出ると貴族区からギルドのある商業区に向かって王都の中をのんびり歩いていた。


 エイラートも辺境領最大の都市でそれなりに活気はあるがここ王都は流石にエイラートの何倍も大きな街で、貴族区を抜けて商業区に入ると、いろんなお店やレストランがあり、それに多数の露店が大きな通りの両側に店を出している。


「久しぶりの王都だし、リズとケリーが買い物したいのなら付き合うよ?」


「う〜ん。私は正直余り欲しいのはないかな。エイラートだと外に出る時は僧侶のローブか神官の格好だし。それにもう貴族や国王のパーティもないし。それよりケリーは?」


「私は最近までここにいたからね。欲しい本は大抵買ったし特にないかな。それにもし何か入用になったらグレイに飛ばしてもらえるし」


「ケリー、絶対俺をこき使うつもりだろう?」


 3人はそんな話をしながら大通りの店屋をのぞきながらのんびりと大通りを歩いていく。


 時々チラチラと二人に視線をむける人もいるが、大賢者と聖僧侶、超精霊士の3人だとは気づいていない様で、冒険者のローブを着ている3人に注がれる視線はどちらかと言えば彼らは誰だ?と警戒している視線が多い。


 3人ともそんな視線には慣れっこなので特に気にもせずに露店でお菓子を買って食べたり、店の外から防具屋や武器屋をのぞいたりしながら歩いていると王都のギルドの建物が見えてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る