第39話 超精霊士ケリー
「ケリー、魔力は?」
「まだまだいけるよ」
「じゃあ右からくるのを任せた。俺は左をやる」
エイラート郊外の森の奥で3人はいつものスキル上げをしていた。右からくるランクAのフォレストタイガーにケリーが精霊魔法を撃つと同じタイミングでグレイが左からくるフォレストタイガーに精霊魔法を撃ち、同時に2体が倒れた。
その時、ケリーの脳内にアナウンスが、
『精霊士の全スキルが上限に達しましたので新たに新しいスキルを取得しました。
スキルの上限を開放しました』
「グレイ、リズ ! 新しいスキルが開放されたよ!」
脳内アナウンスを聞いたケリーがその場で小躍りして叫ぶと、グレイとリズ がケリーに駆け寄ってきた
「よかったじゃない」
リズ がケリーを抱きしめて喜びを分かち合うとグレイが、
「それでどうなったんだ?」
「うん、ちょっと待ってね」
ケリーが脳内に出ている言葉を口にしていく。
『精霊・弱体魔法』
と出て、その下に
・既に取得している魔法を任意に範囲化
することができる。
範囲化した魔法を使用する際の魔力量は
単体魔法の魔力の1.5倍となる。
・精霊魔法使用時の敵対心が大きく減少する
・新規弱体魔法
弱体魔法を撃ち、その後に精霊魔法を撃つと
精霊魔法の効果が増大する。
そのダメージは相手とのレベル、
スキル差に依存する。
黙って聞いていたグレイは、ケリーが話を終えるとびっくりした様に目を開いて、
「こりゃまた凄いのが来たな」
「なんか無敵になったみたいだね」
グレイの後をリズ が続ける。
「本当ね。これはさすがに想像以上だわ」
ケリーも自分で言って自分でびっくりしている。
「範囲化と弱体か。格上との戦闘が格段に楽になりそうだ。よかったじゃないの、ケリー」
グレイが心底からケリーを祝福して言う。
「うん。ありがとう。グレイとリズがスキル開放されたのを聞いて私も頑張ってスキル上げを続けてきてよかったよ」
感激して涙を流しているケリーの背中をリズが優しく撫でている。それを見ながらグレイは
(俺とリズ の時は『???』があったがケリーはそれを言っていない。精霊士はこれで本当の上限なのか?)
(まぁ上限にしても良いくらいにぶっ飛んだのが来ているし)
「ケリー」
グレイが声をかけると、涙を拭ったケリーがグレイを見る。
「ちょっと新しい魔法を試してみてよ」
そしてグレイが森の奥から魔獣を2体引っ張ってくる。ケリーは範囲化と脳内詠唱をしてから精霊魔法を撃つと、2体の魔獣が同時に爆発して絶命した。
「これは想像以上だ」
思わずグレイが口にする。そして
「魔力を持っていかれた感じは?」
「ちょっとだけね。でも連続で撃てるよ」
グレイ程ではないがケリーも相当の魔力の持ち主だ。もちろんリズも常人以上、ケリー並みの魔力を持っている。
その後種族を変えた2種類の魔獣を相手に範囲化の精霊魔法を撃ったが効果は同じだった。どうやらケリーがターゲットにした敵に対して範囲化が有効の様だ。
範囲化された精霊魔法の威力とその効果に3人は驚くばかりで。
「この範囲精霊魔法、違反レベルの強さだな」
グレイはそう言うと、
「弱体から精霊のコンボについてはランクAじゃ検証できないな。相手が弱すぎる。今度ダンジョンでランクS相手にやってみよう」
「そうね。楽しみ」
3人はエイラートに戻るとギルドに顔を出した。ギルマスと会って精霊士のスキル開放についてグレイとケリーが説明をすると、
「お前さんとリズ がスキルアップした時に予想はしていたが、それにしてもとんでもないスキルアップじゃないかよ」
「ちょっとぶっ飛んでるよな」
グレイがギルマスの言葉に同意して言うと直ぐに、
「ぶっ飛んでるどころじゃないぜ。お前ら3人でこの大陸を支配できるレベルじゃねぇか」
ギルマスが会話を被せてくる。そのギルマスの言葉に3人は笑い、リズが、
「私たち、スローライフがしたくてエイラートに住んでますからそんなご心配は無用ですよ」
リズを向いてギルマスのリチャードが顔の前で手を振りながら、
「わかってる。わかってるけどさ。まぁとにかくお前たち3人がいてくれたらエイラートは安泰だな」
「そう言うことで報告はよろしく頼む」
グレイ達はそう言うと後をギルマスに任せてギルドを出ていった。
その後王国内のギルドから発表された精霊士のスキル開放については再び大陸中の冒険者に大きな反響を与えた。
賢者、僧侶がスキル解放された時点で殆どの冒険者は精霊士にもあるだろうと予想はしていたが、その内容があまりに予想の斜め上だったからだ。
そうしてその精霊士がエイラートのケリーであることはすぐに広まり、
大賢者グレイ、聖僧侶リズ に続いてケリーのことを超精霊士ケリーと呼ぶ様になっていった。
「何なのよ、超精霊士って。まるで私が超人で人間じゃないみたいじゃない。もっと格好いい呼び方はなかったのかしら」
グレイの酒場でジュースを飲みながらボヤくケリー
「いいんじゃないの? 私はケリーに合ってると思うわよ」
リズが笑いながらケリーにジュースのおかわりを注ぐ。ケリーはお酒が殆ど飲めないのでグレイのバーに来ても果実汁をメインで飲んでいる。まるで喫茶店にでも来ている様だ。
「もう、リズまで。やめてよ」
グレイとリズ 、そしてケリーが話をしているのを聞いている酒場にいる他の冒険者達。目の前に元勇者で3人ともスキルの上限を解放した化物クラスの3人がいる中で縮こまってお酒を飲んでいると、
「お前達、気にせずに飲んで、話ししてくれよな」
グレイが他の冒険者の空になったグラスに酒を注ぎながら言うが、
「でも、3人が凄すぎて」
一人が恐縮して言うと、カウンターに座っているケリーがそちらを向いて
「皆んなに平等にチャンスがあるのよ。頑張ったらちゃんとその対価は得られるから、あなた達も日々鍛錬して頑張って」
ケリーの言葉に大きな声で返事をする他の冒険者達。
「これでまた来年のエイラートの魔法学院の入試の競争率が高くなるわね」
「そりゃそうだろう。超精霊士のケリーが教師でいるからな」
グレイとリズ の会話を聞いていたケリーが
「私の呼び方は別にして、学院の質が向上するのは悪くない話よね」
と満更でもない様子だった。
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