第9話 討伐依頼 



 二人で住み始めてしばらく経ち、すっかり二人の生活に慣れたある日の朝、鍛錬を終えて2人で部屋で寛いでいると


「グレイ、いるかい?」


 庭にある自宅の門の先にギルマスのリチャードが立っているのが見えた。


 門を開けて部屋に招くとリズが出した果実汁をグイッと飲み、


「悪いがお前達の力を借りなきゃならん事態が起こった」


 リチャードの説明では、エイラートから東に1日ほど行った先にある土地がここ最近急速に腐って来ているとその地に住んでいる農民から連絡があり、冒険者が出向いたところ、複数体のオロチの痕跡を見つけたらしい。


「オロチはランクAでも上位の魔物だ。しかもそれが複数体いるとなるとギルドから討伐隊を出して処理せねばならん。お前達にも出向いてもらおうと思ってな」


「オロチか…厄介な魔物だな」


「放っておくと、どんどん被害が広がるわね」


 グレイはリズに頷くとギルマスを見て、


「わかった俺たちも手伝おう」


「助かる。出発は明日の朝一番だ、よろしく頼む」


 そう言ってギルマスのリチャードが家から出ていった。


 その後二人で家の地下室に降りて


「リズは土地の浄化を優先してくれ」


「そうね。じゃあこの杖を持ってこうかしら」


 リズの防具、装備も広い地下室に整理して置いていて、その中から神聖魔法の威力が増える杖を手にとると自分のアイテムボックスに収納する。


 二人ともアイテムボックス持ちなので装備の他に薬品や野営用のテントや設備、それと食糧や水をアイテムボックスに入れて準備をしていった。


 翌朝ギルドの前に二人でいくと、既に冒険者達数名が集まっていて、二人を見ると頭を下げてくる。大賢者とランクSの僧侶、どう見てもこの街では最大の戦力だからだ。いや、今やこの大陸でも最大の戦力といえる。


 グレイはパーティの時の賢者の装備に賢者の杖、リズは僧侶のローブに同じ様に杖を持っている。スタイルがいいのでローブの胸の盛り上がりも強調されている。おまけにとびっきりの美人だ。男の冒険者の視線はどうしてもリズに向かいがちだ。


(リズを見るのは仕方がない。許してやろう)


 グレイがそう思っているとギルマスがやってきて


「待たせたな。馬車を用意していた。これから東に向かってもらうがこの街で揃えられるランクAの冒険者に来てもらった。他のランクAの奴らは今は街にいないので間に合わない。少ないがグレイとリズが手伝ってくれるから何とかなるだろう」


 そう言ってギルマスがグレイとリズに紹介したのはこのエイラートでランクAの冒険者達。


トム、ブレイン  共に戦士

シモンズ    ナイト

ホセ、シオン 精霊士

マリー 僧侶


 の6名だ。これにグレイとリズを加えた8名が馬車に乗り込んでエイラートの街を出発した。


 御者はギルマスのリチャードがして馬車を進めながら荷台に座っている8名に

状況を説明していく。


「オロチが何体いるのかは分かっていないんだよな?」


 戦士のブレインがギルマスに聞く


「跡を見る限りは最低2体だが、それ以上いる可能性があるな」


「グレイさん、現地に着いたらどうしますか?」


 シモンズがグレイを見て聞いてくるので


「リズとマリーは腐った土地の浄化をしてくれ」


 頷く二人


「残りは全員一緒に探索にでる。オロチは一人で倒せるほど弱い魔物じゃない。精霊魔法をオロチの頭の後ろにぶつけて凍らせ、それから剣で頭の後の凍ったところを切って止めを刺すんだ」


「あと、オロチが吐く息には注意して。腐敗、状態異常を引き起こす毒が入っているから正面には立たない様にしてね。オロチが大きく息を吸い込む動作が見えたらすぐに正面から離れて」


 リズが捕捉で説明をすると頷くメンバー。勇者パーティの時も作戦の骨子はグレイが考え他のメンバーはその案に肉付けしたり、補足したりして全体の攻略方法を考えていた。


(流石にランクSのパーティだ、敵の弱点攻撃の手順の説明が理に適ってる。他の奴らにもいい勉強になるな)


 ギルマスのリチャードは馬車を引きながら馬車の荷台の中で交わされる会話を感心しながら聞いていた。


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