第6話 大賢者グレイ


 エイラートに戻ってギルマスのリチャードに新しい魔法を習得したことを報告すると、びっくりした顔をして、


「こりゃ大ニュースだぜ、中途半端と言われた賢者が実は後衛職の中じゃあ最強のジョブになっちまったんだから」


 興奮冷めやらぬといった口調でギルマスが話すのをグレイはさめた表情で聞き、


「ただ、この賢者独自の魔法の習得は相当大変だと思う。自慢じゃないが、ランクSの俺がここまでやってやっと到達したくらいだからな」


「まぁな。その辺の取得の難易度も含めて大陸中のギルドに報告する。

お前の名前は出さないから安心しろ」


「好きにするさ」


 しばらくして大陸中のギルドから賢者についての新しい発表があった。


 賢者特有の魔法である空間調整魔法については多くの冒険者が驚き、そしてその有能性に高い評価を与えたが、同時にその取得難易度が極めて難しい事も理解された。


 ギルドの説明では、


 ➖この空間調節魔法各種についてはランクSの賢者の冒険者が数年スキル上げを続けて取得できるかどうかのレベルにある魔法である➖ と。


 しかしながら賢者が最強の後衛ジョブになり得るということは今後の冒険者達のジョブ選択の中で大きな変化となって、賢者を選ぶ新人冒険者が増えたという話を後日ギルド経由でグレイも聞いた。


 そしてこの発表を違う意味で受け止めていた人たちもいた。


「グレイの奴、とうとうやったか。パーティを解散しても日々弛まぬ精進を続けていた賜物だ」


 立派な屋敷の窓の外に広がる自分の領地を見ながらエニスは自分の事の様に喜んでいる。


「グレイ、お前ならやると思ってたぜ。ふふ、こっちも負けてられないな」


 ルサイル王国の騎士団の宿舎からアル・アイン王国の方を向きながらクレインが呟く。


「本当にグレイは凄いわ。とうとう抜かれちゃったけど、どう言う訳か

抜かれたのがグレイだと悔しくないのよね」


 王都の部屋でギルドのニュースを見たケリーがその記事を見ながら微笑んでいる。


「グレイ…やっぱり凄いわ、貴方」


 神殿の控え室でリズがボソリと名前を呟くとそのまま部屋を出て神官の上の位にあたる大神官の部屋に出向いていった。



 バンガール大陸中で賢者について話題になっている中、グレイは相変わらずの日々を過ごしていた。


 ただし、移動魔法を覚えてからは城門を出てすぐに森の奥に移動できる様になったので彼のスキル上げの効率は格段によくなっていた。


 エイラートの街では空間調節魔法を取得した賢者がグレイであることはすぐに冒険者達の間で広まり、彼らはグレイの酒場に来ては酒を飲みながらこの大陸唯一の大賢者であるグレイの話を聞きたがったので酒場は毎晩満員御礼となった。


 そう、誰彼ともなくグレイのことを大賢者と呼ぶ様になっていたのだ。


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