第5話 新しい魔法


 こうしてグレイがエイラートで酒場を始めて2年が経った。


 その間、ランクAの冒険者に雇われ彼らと一緒にダンジョンに潜ったり、ある時はランクB,Cの連中の講師として精霊魔法、回復魔法を指導したりと月に1、2回、傭兵の仕事をこなしてきている。


 店を開店して半年も経つとグレイが酒場を経営する元勇者パーティのランクSの賢者で、今はギルドの傭兵の立ち位置であるということが冒険者の間では知れ渡る程になっていた。



 そんなある日、グレイがソロでエイラート郊外の森の奥で複数体いたランクAの魔獣を倒した直後、


『賢者のスキルがあがりました。賢者のスキルが最高に達した為、新たに賢者専用の魔法を習得しました。スキルの上限を開放しました』


 久しぶりの脳内アナウンス。しかも賢者専用の魔法を習得。


「はは。今になってようやくスキルが上がって賢者のオリジナル魔法を取得したか」


 賢者は精霊士、僧侶の劣化版と言われ、魔法についてもそれぞれのジョブの魔法しか習得できなと言われ続けてきた。


 しかしグレイが賢者を極め続けたことにより賢者専用の魔法が存在することが今証明されたのだ。


 グレイが脳内で新たに取得した魔法を見てみる。


『空間調節魔法』

 と出て、その下に

・浮遊、飛行魔法

・消音、隠蔽魔法

・移動魔法


さらにその下は

『???』

 となっており、まだ取得可能な魔法がありそうだ。


「それにしてもいきなりすごい魔法が出てきたな」


 森の中で独り言を言いながら一つずつ魔法を確認していく。

 浮遊魔法はその場から浮き上がり、そしてそのまま飛行できる魔法で。浮遊できる高さ、飛行できる距離は魔力に比例する様だ。


 魔力の豊富なグレイだと相当高く、また遠くまで移動できそうだ。


 消音・隠蔽魔法は文字通り完全に周囲から姿、そして物音を消せる魔法だ。この魔法を使って魔獣に近づいても全く気づかれなかったので視覚、聴覚のみならず気配そのももも消せている。


 そして最後の移動魔法。

 頭の中で過去に行ったことがある風景をイメージしながらこの魔法を唱えると瞬時にその場所に移動できる


 どの魔法も極めて優秀な魔法だ。しかも浮遊・飛行魔法と消音・隠蔽魔法は同時に掛け合わせができる。


 即ち姿を隠したまま空を飛んでいけるということだ。


 魔力はそれなりに消費するが、元々並外れた魔力量を内包しているグレイにとってはこの程度の魔力消費量は全く問題にならない量であった、


 さらにグレイが驚いたのは従来の精霊、神聖、回復魔法についても今まで取得でいなかったそれぞれの最高レベルの魔法が習得できていたことだ。


 これで、賢者は精霊士、僧侶が使用できる全ての魔法を使え、それに加えて賢者専用魔法が使用できる様になった。

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