第3話 回想 その3
「グレイ、これからどうするんだ?」
自分たちの第二の人生が決まった元勇者のエニスや他のメンバーが心配して聞いてきたが、
「これから何をするか、ゆっくり考えるよ」
その時点では自分で何も決めてなかったグレイはそう言ってメンバーがそれぞれの道に進むのを送り出していった。
このままランクSとして王都で冒険者を続けるのも魔王という目標がなくなってしまった今ではモチベーションが上がらず、王都の宿で3日程考えた彼は、
「そうだ。これからはスローライフをするぞ。田舎で酒場をやろう」
と唐突に決めると次の日には王都を出て北に向かい、辺境領最大の街のエイラートに移動していった。
エイラートに着くと、勇者パーティ時代に何度も顔を出した冒険者ギルドに出向いて、ギルマスのリチャードの執務室に顔を出す。
「よぉ、グレイ。久しぶりだな。魔王討伐の祝勝パーティは落ち着いたのかよ?」
年は30代後半、元冒険者でがっしりとした体躯のギルマスが握手を求めてくるのを返し、ソファに座ると魔王討伐から今までの事の顛末を説明していく。
「そうか、解散しちまったか。まぁそうなるわな。良いパーティだったが皆それぞれの人生を歩き始めたって訳か。ところでグレイ、お前はこれからどうするんだよ?」
「それだが、賢者を雇ってくれる人はいない。もっとも俺自身それを望んでないしな。ここエイラートで酒場でもしてのんびり過ごしたいと思ってやってきたんだ」
ギルマスはその言葉にびっくりして片方の眉を吊り上げると、
「お前が酒場の親父?それでいいのか?」
「ああ。辺境領で酒場をしながら、自分のスキルをのんびり上げられたらそれでいい。ここでスローライフすることにしたんだ」
スローライフねぇとギルマスはぶつぶつ言い、
「世間の評価は低い賢者だが、お前さんは別格だ。精霊魔法も回復、神聖魔法も、そりゃ勇者パーティの本職に比べたら低かったかもしれん、ただ、他の精霊士や僧侶に比べたら桁違いの強さだ。それに魔力だって計り知れない程多いしな」
「それも終わったことさ。幸いに金はそれなりにある。ここで酒場をしながら周辺の魔物相手にスキル上げして過ごすのが俺の性に合ってる」
「スキル上げするってことは、まだ上を目指しているってことか?」
グレイの言葉に食いついてくるリチャード。
「まだ22歳だ。もうちょっと強くなれる気がするんでね。かと言って本格的に冒険者を続ける気はないのさ。魔王倒したらモチベーションが下がってしまってさ」
グレイの言葉にしばらく黙って考えていたギルマスのリチャード。
「わかった。そう言うことなら俺が協力してやろう。グレイがこのエイラートに住んでくれるっていうのは悪い話じゃないからな。まず酒場だが、この街でいい場所があるかどうかギルドで調べてやる」
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