第2話 回想 その2
2年前に5人のランクSの冒険者からなる勇者パーティが魔王を倒した。
勇者パーティは大陸中から同じ様な年代の優秀な冒険者を集めて作られ4年前に結成、そして2年間の魔王軍との戦闘を経て2年前に魔王城で魔王討伐を成し遂げたのだ。
大陸中が勇者の功績を称え、勇者とその一行は魔王討伐の報告でバンガール大陸にある3つの国、アル・アイン王国、ルサイル王国、そしてメディナ教皇国を表敬訪問した。
訪問先の各国の王都、首都、皇都では盛大な歓迎を受け、そして各国からパーティメンバーにはそれぞれ膨大な報酬が与えられた。
そうして3カ国の都を全て回った全員がランクSの勇者パーティはその使命を終えて解散した。
勇者だったエニスはアル・アイン王国の大貴族の娘と結婚し自分も貴族の仲間入りをし、
ナイトのクレインは自分の出身国であったルサイル王国の首都にある王立騎士団に迎えられそこの副師団長となった。
精霊士のケリー もアル・アイン王国の王都にある魔法学院の教師として若手の育成にあたることになり、
僧侶のリズ は出身国であるメディナ教皇国に帰っていった。おそらく神官として働いている。
そして賢者であったグレイはアル・アイン王国の北にある辺境領最大の都市のエイラートに移住し、そこで酒場のマスターを始めたのだ。
バンガール大陸はその大陸の北部には万年雪を被った高い山々が大陸の東から西まで連なっていて、その山脈の北側はいまだ未開の地だ。噂では夏でも氷が溶けない極寒の地と言われている。
北部の山脈から南側に3つの国と魔族領がある。
大雑把に言うと、アル・アイン王国は北東部分、
ルサイル王国は南西部分、そしてメディア教皇国は
東南部分に位置する。
魔族領は北西にあり、アル・アインとルサイルの両国が魔族領と接しており、メディアは魔族領からは最も遠い場所にあり、北をアル・アイン、西をルサイルと接している。
そして、そのアル・アインの北部、山脈から近い場所に辺境領があり、その辺境領最大の都市が今グレイが住んでいるエイラートだ。
グレイは身寄りもなく、冒険者としてランクを上げて勇者パーティに見込まれて最後にメンバーになって魔王討伐に参加した。
そして魔王討伐後にメンバーがそれぞれ名誉、地位を得てそれぞれの国に戻って仕事をするなか、賢者というジョブでしかも身元もはっきりとはしないグレイにはどこからも声が掛からなかった。
賢者というジョブは僧侶と精霊士の劣化版と言われ、僧侶の神聖、治癒、回復魔法、そして精霊士の精霊魔法の両方が使えるが、それぞれの能力は専門家の僧侶、精霊士には及ばず、僧侶、精霊士の魔法の能力を5とすれば賢者はせいぜい3.5〜4のレベルであった。
ただ、両方使えるハイブリッドジョブはパーティでは両方のサポートができるということ、また、グレイは人より圧倒的に多い魔力を内包していたのでパーティが魔力欠乏になることはなく、世間一般の評価はともかく、パーティメンバーはグレイのことを高く評価していた。
とはいえ、世間の評価の高くない中途半端なジョブで、また孤児でもあった賢者のグレイを雇おうとする人はおらず、結果グレイは大量の報酬を得たものの、1人ぼっちになってしまったのだ。
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