第2話 選択肢はみっつ

「選択肢はみっつ…。ひとつ、このまま現世で幽霊になるか。ふたつ、輪廻に乗り来世で生きるか。みっつ、神になるか。」

彼は私の問いには答えず三本指を立てた。賢明にスルーするべきひとつの選択肢をスルーし切る前に、思わず疑問が声になってしまったのは不可抗力だ。


「え、神…?」

「この選択肢は普通はありえない…。最高神は君が神になることをお望みだが…、僕らには亡霊の意思を尊重する義務がある…」

どうやら、やっぱり私は死んだようだった。亡霊、という言葉が自分を差すことに、少しも違和感を覚えない。

しかし、神になれるとは一体どういうことか。しかも、最高神が私に指名で?夢…?

だめだ、現実逃避する前に、この問題を片付けなければならない。


「あの、最高神様はなぜ私をお選びに?」

「僕は神の僕…心中を推し量ることはできない…」

「あ、そ、そうですよね…」

この人、絶対にぼっちだ…!なに、このトーク力の無さは?他に何か言う事あるでしょ?

…彼はそう思っているのだろう。情けないが、この人も積極的に話すタイプじゃないようなのが唯一の救いである。


「神になるって、あの、最高神様がいらっしゃるってことは、それに派生する神々になれるってことですか?」

「肯定。しかし、何の神になるかは口どめされている…」

口止め…?言わない方がいいこと、なのだろうか。

さっきから薄々感じていたが、この人、誰なのだろうか。ただの僕が、次の神候補に会いに来るか?神様がその神に後継者が必要だと思うぐらいには、最高神様とその神は近い地位にあるのではないか。ならば少なくとも人間のマナーでいうと、この人は、その神の腹心じゃなければならない。それで、人間社会でいう一番近い表現は…側近である。

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